伝説の……
S:song――歌って踊って
のど自慢。
最後の勝負はのど自慢だと、幼馴染で命の恩人で今はケンカ中というか決闘中な俺の好きな人であるアキは宣言した。
俺は意表をつかれはしたものの、もはや驚くこともなくアキの起こしたデタラメな激流に従うことにした。溺れた身としては頭の中でも使いたくない単語だな、と思いながら。
全校生徒の前で。
そう呟く言葉に、俺は気づかなかったのだ。
「勝負は放課後。カラリと乾いたグランドで決着つけましょう!」
気づいたときには、『ハル対アキ 因縁の幼馴染☆のど自慢対決!』は全校生徒の待ち望むイベントに仕立てあげられていた。俺の悪友と、彼女の親友たちの驚くべきチームワークによって。おい、放送委員をどうやって懐柔したんだ?
ちなみに俺たちの担任は「生徒たちの自主性を尊重したい」と校長に直訴までしてまで『のどでも腹でもない、心の底から歌おうぜ同盟(のど自慢実行委員会)』を援護した。