里美ハチ犬伝
首輪を付けた父親―朗―を散歩させる姿を想像してしまい、里美は笑い出す。
「だけどハチは、気が向いたら遊び来るって言ったから」
「そ、そうか」
また里美が変なことを言ったために朗と莉奈は首を傾げたが、里美がそれで納得しているのなら、それで良いかと別段気に留めることはしないようにした。
「それじゃ、里美。帰りましょうか」
「うん」
里美は莉奈と朗の手を繋ぎ、ハチのことを話しながら家へと帰り行く。里美が語る内容―ハチは宇宙人―に、朗と莉奈は呆れたが、どうせ夢でも見たのだろうと胸の奥で留まらせることにした。
里美たちが公園から出た後すぐに、反対方向に在る入り口から、子供が公園に入ってきた。そして子供は地面に這いつくばった。何かを探すかのように……。
そのことに里美たちは気付かないままで、家路を急いだのであった。