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恋の掟は夏の空

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長い夜の始まり−2

ここに来て始めてのインターフォンの音だった。
「だれだろう・・」
「おにーちゃんの彼女だったりして」
受話器を急いでとると
「劉。いるー?」
インターフォンからではなく玄関から声が聞こえた。
由紀子だった。
「なんだ、お前か?」
「なんだはないでしょうに。あれ、誰かいるんだ?ドア開いてたよー」
言いながら、もう、靴を脱いでいるようだった。

「あ、由紀子です。こんにちわ。」
手にスーパーの袋を提げて、直美を見ている。
「あ、直美です」
椅子から立ち上がって、箸を持ちながら頭を下げている。
俺は間で、ドギマギしていた。
「なーんだ、ご飯中か・・いっぱい買ってきちゃったお惣菜。私」
「いま、食べだしたところなんだ」
「そっか、じゃ、オカズ買ってきちゃったから、これも一緒に食べようか?」
そう言いながら、キッチンに立って、お惣菜をもう、出し始めている。

「劉、明日、帰っちゃうんでしょ?今日予備校なかったからさ、毎日会ってるのにさびしいかなーと思ってさ・・」
「バカか。お前は・・」
「あーひどいじゃん。ま、お父さんが、おいしいものでも食べさせてきなさい。って言うから来たんだけどさ」

直美は黙って聞いていた。

「で、彼女なの?」
「はぃ、えっと、彼女でいいと思います」
ビックリした。そんな事を直美が言うとは思わなかった。

「へー。なんだ彼女いたんだ・・知らなかった」
「あのね、うーんとね、親戚でいいよね。俺ら」
「どっちかと言うと、ちっちゃい頃からの幼なじみのが近いんじゃないの」
お皿をテーブルに並べながら由紀子が俺を見ながら言った
「1年に4回ぐらいしか会わなかったから、幼なじみは、どうかと思うけど」
「ま、いいじゃん。なんでも。さ、食べようか」

椅子を引いて俺の隣に座り込んだ。
「さ、食べようよ。えっと、名前なんだっけ?ごめんね」
「直美です。」
「ごめんごめん。これつくったの?すごーい。劉の半分食べていい?」
言いながら、もうハンバーグを口に放り込んでいた。
「おいしぃー。じょうずだね。」
「でも、このレンコンの肉詰めもおいしいから食べて。スーパーのおばちゃんが作ったんだけど。  はぃ 劉は2個の直美さんも2個食べられるよね」
「は、はぃ」
直美はおしゃべりな由紀子のペースにあわてている。
「さ、もりもり、食べよう。楽しいね、なんか・・」
直美も俺もなんだか、一生懸命食べだした。

「学校いっしょなの?」
「はぃ。クラスは違うんですけどね」
「へー 無理やり口説かれたんでしょ?」
「いえ、どっちかというとこっちからなんです」
「うそー なんで、こんなのいいのよ」
こんなの扱いだった。
「付き合いだしたばっかり?」
「もう、1年になるぐらいかな・・」
「うそ、そんなに付き合ってるの劉と・・知らなかったぁ・・なんで言わないのよ」
何で、報告しなきゃいけなんだよ・・って思ったけど口に出すと思う壷にはまりそうなのでやめとこう。
「このサラダもおいしいです」
「私が作ったんじゃないけどね。歳いっしょだから、丁寧にしゃべらなくていいよ。直美」
「は、はぃ」
3人はなぜか、もりもり、食べていた。
「ごちそーさま。お母様」
由紀子はさっさと、食べ終わった。
あわてて俺らも
「ごちそーさま」
「あ、劉!ごちそうさま、母上さま。でしょうが・・・」
「めんどくせーじゃん」
「だめだよ、ちゃんと言わなきゃ」
直美はなんの事だかわからずに、俺の顔を見ている。

皿を持ってキッチンに立ちながら、背中を見せて、由紀子が、
「で、今日はここに泊まるの?直美は?」

直美はこっちを見て、
「うん。」
それは、俺に返事していた。
直美の瞳に部屋の明かりが映っていた。
作品名:恋の掟は夏の空 作家名:森脇劉生