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恋の掟は夏の空

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東京の夏−5

部屋は広いのになぜか1LDKになっている。
20畳ぐらいのリビングダイニングと、寝室が10畳ぐらいだろうか。
にーちゃんは、神経質なので、何も余計なものがないすっきりした部屋っていうか、
生活観のない部屋と言ったほうがいいのかもしれない。
それとも前に住んでた愛人の趣味なんだろうか。

「わー、ここに、ここにお兄さん一人ですんでるの?」
「そうみたい。女の人の気配はないんだよね。」
たしかに、何日かここに寝泊りして、あっちこっちひっくり返したけど
それらしいものはひとつもでてこなかった。

「劉も、大学受かったらここに一緒に住むの?」
「どうだろう。ま、受かる大学の場所と、にーちゃん次第かな」
神経質なにーちゃんは、きっと、嫌がるだろうな、俺と一緒は。
田舎に帰るときに、ここも掃除して帰らないとあとでなにを言われるか
わかったもんじゃない。

「さて、つくろうかなー。晩御飯。おなかすいちゃった。私」
「手伝うのか・俺は?」
「やだ、そこに座ってTVでも見てていいよ。きっとじゃまだもん」
「ひでぇ。言われ方だな」
「出来て、並べて、ビックリっていいじゃん。なので、遊んでてよ、てきとうに」
出来て、ビックリって言っても、材料見ちゃったから、想像は付いていた。でも、出来上がったらビックリしなきゃいけないだろうなー。

「じゃ、TVでも、見るわ。指切るなよ」
「あ、バカにしてる。   ねー、ここの自由に使っていいよねー」
そういいながら、もう彼女はキッチンに立っていた。
クーラーがまだ効かないので、暑い部屋で、おでこに汗を光らせて白いTシャツだけになった彼女の後姿だった。

TVをつけて、俺はばかでかいソファーに横になった。オジキのもと愛人が買ったらしい真っ赤な皮のソファー。(この色はにーちゃんは絶対買うはずがない)

買い物袋を開ける音と、包丁の音と、かすかな、お皿の音が気持ちよく響く。
それに、直美の鼻歌も、なぜか、心地よい。
TVの音はなるべく、小さくして、彼女の背中を気づかれないように見ていた。

小さな声で彼女は歌を口ずさんでいた。
それは、子守唄のようにクーラーの風と一緒に俺の頬を伝わりだした。

「ねー 寝ちゃったのー・・・」
うとうとしていた。

彼女の手作りのご飯を一緒に食べれたらいいなー。ってガキみたいに思ったことはあったけど、
実際にそうなってみると、とても自然だった。
ドキドキもせず、ウトウトなのだから。
作品名:恋の掟は夏の空 作家名:森脇劉生