恋の掟は夏の空
東京の夏−3
あと、2日だな、東京も
予備校は今日で終了になる。通常講義は昨日で終わったから、今日は1日限りの、「有名私大その傾向と対策法」だ。
有名先生の特別講座だから、今日は1番大きな5階の501号室か。
階段を上がりきり教室に近づくと
「おはよう、静劉。」
聞きなれた声のような・・
「あ、なんで、いるのよ、お前?」
「久しぶりに会っていきなりお前はないでしょうに」
びっくりして、なんだか、よく頭がまわらない。
「なんか、用か?」
とんでもない返事かな
「私も、この講座受けるんだ。早くしないと席なくなっちゃうって」
言いながら俺の左肩は掴まれて直美に連行される。
「ここでいいかな、ちょっと後ろだけど、黒板なんてどうせ、見ないでしょ?」
「たぶん、あんまり、書かないと思うよ」
「ふーん。さすが予備校通ですね。苦しむ受験生君!」
大きな眼で笑い出す
「俺、聞いてないけど。来るって」
「内緒にしてました。うれしいでしょ。会えて」
あ、化粧してるのか。今日。
「うーん。こんなところで、会えてうれしい・・ってのもどうかと思うけど」
「場所は関係ないでしょ。」
周りを見回して、その顔は輝いている
「終わったらお昼食べようね。いいところ連れてってよ」
「毎日食べてるトンカツやぐらいしかわからないよ。そこでいいなら、だけど、」
「おいしいならそこで、いいよ」
おいしいんだけど、雰囲気がちょっと、どうだろうって考えたけど言うのはやめた。
そうだ、今日は由紀子は、予備校の授業はないって言ってたっけ。
土曜日だから、あの俺の苦手な父上様と、のんびりしてるんだろうか。
「なんか、考えたでしょ、今」
「メシ食ったら、その後はデートするのかな、俺らって思って」
「あたりまえでしょ。予定では表参道行って、洋服買って、ケーキを食べて、
新宿で映画見て、それで、晩御飯です」
なにも、手帳出さなくてもいいものを、どうやら、行きたい店の名前まで、書いてあるように見える
「晩御飯って、どういう意味・・」
「ご飯作ってあげるね、お家で」
なんか、凄いこと言われたような気がする。
「今日、何時に帰るのよ」
「お泊りです、明日一緒に帰ろうよ」
ますます、頭の中が真っ白だ。
先生が教室に入ってきた。
「さ、一応聞きますか?受験生のあなたと、受験生の私ですから・・」
受験生もなにも、試験より、動揺してるぞ、俺。