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恋の掟は夏の空

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抱きしめた長い夜

「起きちゃった?」
小さな声が暗い部屋にかすかに響く
「寝ちゃってたね・・」
手はまだ、直美の手のひらの中にあった。
直美の細くすらりと伸びた指が俺の指に絡んできた。

キスをしていた。今日何回目かの長い長い時間だった。
静かにゆっくりゆっくりと時間は流れていく。

「ちゃんと寝ようよ。劉」
唇を離して耳元でささやく。
抱きしめた直美の体は小さく揺れている。
黙って、彼女の手を俺の首に抱かせて、彼女を抱えて薄暗い部屋を移動していた。
「重たい?」
「思ったより重くないよ」
小さくため息混じりに笑っているようだった。
ベッドに優しく優しく体を一緒に沈めこんでいた。

「愛してるよ 劉」
「愛してる 直美」
5cmも離れていない距離で暗闇に光る瞳を見つめ合っていた。
まっすぐな瞳は星のように綺麗に輝いている。
抱きしめられた背中の指が震えていた。
大丈夫だよって俺の腕も彼女を包み込んでいた。
足元から、布団を持ち上げて彼女の体を包み込ませた。
彼女はそれを俺の体にも巻きつかせ、二人は小さく一つになっていた。

彼女の手は徐々に優しい息遣いで俺の背中を包みこんでいる。
天使の羽に抱かれるように優しい気持ちだけが伝わってくるようだった。

「大好きなの」
「俺でいいのか」
「劉がいいの」
腕の中の女がまっすぐにまっすぐに俺だけを見つめていた。
俺の心も直美をまっすぐ、まっすぐに見ていた

「今日はずっとこうしてて」
黙って彼女の体を引き寄せていた。
胸の中にうずめた彼女の頬をずっと撫でていた。

昨日までの俺はいなかった。
直美にだけ愛を誓った夜だった。

彼女は静かに寝息を立て始め、俺はずっとずっとそれを聞いていた。
このまま静かにずっと抱きしめようと思っていた。
それが、俺が今日できる精一杯の彼女に対する償いだと思った。
安心しきった寝顔をずっとずっと離さないように。

うとうとして寝入ったのは時計の針がうっすら5時をまわった頃だった。
夏の朝の日差しはもう差し込んでいた。
作品名:恋の掟は夏の空 作家名:森脇劉生