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恋の掟は夏の空

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二人っきりの部屋

玄関を入るといきなり、
「ねーおフロのお湯沸かすね、ここだよね、お風呂場」
もう扉を開けて、中を覗き込んでいる。
「赤いほうの蛇口ひねるとお湯でるから、まわしておいてくれれば、いいよ」
「お、でたよーこのままでいいの?」
「うん、5分ぐらいで一杯になるからそのままで」
手に提げたビールをとりあえず、冷蔵庫にしまいながら話をしていた。
振り返ると、もう彼女はソファーに寝転んでいた。

「これ、おっきぃから、ここでも寝れちゃうね」
「そこで、俺が寝ようか?直美が向こうの部屋のベッド使うか?」

「あ、ベッド見てないや・・」
ソファから飛び降りて奥の部屋のドアを開けて覗き込んでいる。

「わー、あのう、ものすごい大きさのベッドに見えるんだけど・劉・・」
俺も最初見たときは驚いたから、仕方ないだろうなー

「うーん、たぶん、エクストラキングベッドだと、思う、それ」
「初めてみた。こんなおっきいの・・」
「なんか、シーツとか、買うとメッチャ高くてイヤになるってにーちゃんが言ってました」
「そうだよねー」
ベッドでゴロンゴロンしながら、彼女は笑いながら
「ソファで寝なくてもこれなら、3人でも寝れちゃうね。」
4人でもなんとか、いけそうな気がしていた。

「じゃ、ここで、一緒に寝ようね。劉。寝相悪くても足で劉にケリ入れなくてすみそうだから・・いいでしょ。寝相悪いんだよね、私。」
「俺もメッチャ悪いんだけど・・」
「ねね、ちょっと寝てみようよ。ためしに・・」
左にずれて、マクラをたたいたところが俺の位置らしい。
「こんな感じですか?」
二人で上を向いて横になった。
「足、こっちに出してみて?あ、ぶつからないよ・・大丈夫だねー」
「あのう、直美の足もこっちに出さないとわかんないでしょうが・・」
「あ、忘れてた、私の足があったか・・ありゃ、当たっちゃうね・・」
俺の足の上に、直美の足がちょこんと乗っていた。
「こんどは、手伸ばしてみてよ、ぶつかるかなー」
「こう?」
出した手はぶつかるどころか彼女の手のひらにしっかりと握られた。
「なんか、気持ちいいねー、劉」
「天井二人で見つめても、気持ちいいもんですかねー」
「いいもんは、いいわよー」
黙って聞いていた。
今日、1日のことを考えていたような気がする。
俺が黙っていると直美も、なにも話さなくなった。

「おフロのお湯溜まったかな・・」
「うーん。もう少しかな、きっと」
「見てくるね」
くるっと体をまわすと、俺の上に体を乗せてきた。目の前に直美の顔がある。

「ねぇ」
小さい声だった
「うん」
小さい声でこたえた。
「私って、ひどい子かな・・」
何を言っているかはわかっていた。
「お前に、そんなことを言わせてる俺がひどいんだと思う」
泣き出しそうな眼を見つめていた。
静かに彼女の頭を抱え込んで、抱きしめた。
抱きしめる以外に俺がいま、直美にしてあがられることはなかった。

静かに俺たちは、心を抱きしめていた。

お湯があふれていることに気づいたのはそれから、10分も過ぎたあとだった。

二人っきりの部屋に電話が鳴り出していた。
作品名:恋の掟は夏の空 作家名:森脇劉生