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三顧の無礼、されど彼は往く

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「……と言うわけだ」
成る程、と頷く農夫。
「三度目の正直という言葉もある、だから私は急いでいたのだが……それにしてもこの麺は、その、旨いな」
最後の一口となってしまったそれを、名残惜しそうにもぐもぐと口に含みながら趙雲は呟く。
「でしょう?私もこれを食べないと元気が出ないんです」
同じくもぐもぐと噛み締めながら答える農夫。
「お嬢さんの手作りなんですよ、これ。」
彼の言葉に、趙雲はほうっと声をあげ、その声に驚いたのか、少女は一瞬肩を竦めた。
「いや、驚かしたのなら申し訳ない、しかし、この……麺か?」
頷く少女。
「この麺を作ったのが貴女と聞き、驚きを隠せなかったのだ」
少女は思わず目を瞬かせるとにこりと微笑んだ。そして、趙雲の器の中をちらりと眺めると、そっと手を差し出した。
「ん」
「お代わりは如何ですか?」
すかさず、隣から器を差し出し、農夫が答える。
少女は微笑みながら、そっと彼の器を受け取り白い麺を山盛りに盛り付けると趙雲の方に向かい合い、夫は食が太い方ではありませんの、と口にした。
「成る程」
頷きながら趙雲は器を差し出した。
「わざわざ鍋を持参し往来の真ん中で炊く理由が解るような気がするな」
少女は笑みを崩さず、一度手を止めると趙雲を見上げた。
「これならば、どこまでもするすると入っていく」
ふふっ、と少女が息をもらしたような声を上げた。
そして、会話はその声を最後に、暫く中断する。話が一段落したというのも理由ではあるが、麺を啜る音が、三人の口から言葉を取り上げてしまっていたからであった。