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三顧の無礼、されど彼は往く

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「ん、兄者、何を見てるんだ?」
ふと、彼の手にしている木簡に気付いたのか、張飛は彼の隣に這い寄る。
「これか、……これは兵法の書だ」
首を傾げる張飛。
「兵法?なあんだってそんなもの」
そんな彼は、横から木簡を覗き込むと、
「誰かが元直殿に代わりて指揮をせねばならぬ」
答える関羽の言葉を耳に暫く字の流れを追っていたがやがて内容に嫌気がさしたのだろう、僅かに顰めっ面をして、彼から少し離れた。
「へえ、じゃあ兄者は、此処の主は要らねえっつうのか」
木簡を送る関羽の手が止まった。そのままゆったりと長い髭を触りながら張飛を見る。
「要らぬとは言わぬ。しかし懐かぬ野良犬を可愛がる義理もない」
「まったくだ」
張飛は頷いた。
「あいつは仕官を断るとか断らないとかじゃねえもんな」
そのまま、酒瓶を抱きしめ、横になる。
「折角玄徳の兄者が来てやってるってのに会おうともしやがらない……」
再び関羽が木簡を読み始めたのか、木の擦れ合う音が静かに立ち始めた。
「ああ、なんだって玄徳の兄者は引きこもり野郎の軍師なんかを迎えようっつうんだ」
それよりも元直の奴を取り戻そうぜ!と叫び続ける張飛。
関羽は軽く彼を眺めたが、やがて自らの読書に没頭していく。
下品な言葉を並べ続ける張飛を諫めないのは、彼もまた同じ理由を抱いていたからであった。新野の街に出れば暫く戦乱のなかった荊州という土地柄からか彼の目から見ても才覚ある軍師候補は山ほどいる。
それを何故、前の軍師の紹介というだけで山奥くんだりまで来なければならないのか、しかもいつも不在の若造の為に。口には出さないが、そう思わないことはなかった。