小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

告白

INDEX|2ページ/7ページ|

次のページ前のページ
 

 高潔なあなた様がこの先を読んでいらっしゃるとは限りません。しかし私は告白を続けさせて頂きます。あなた様に読まれずとも良いのです。それは問題無いのです。問題があるとすれば、それはあなた様が今この文面をお読み下さっている事に他なりません。それはつまりあなた様が私の罪にご関心を抱かれたという証です。だとすれば私には全てを説明し、お話しする義務があるのです。私はあなた様のような素晴らしい方に結婚を申し込んで頂いた翌日に、あなた様の元からまるで煙のように消えた卑劣な女です。私と言う女を、その人間性をとことんまで軽蔑し、侮蔑し、嘲って頂く為に私は告白を続けるのです。全て私などと生涯を共にしなくて良かったと安堵して頂く為です。
 あなた様は続きを読む事を決めたと同時に、何故今まで黙っていたのかと、隠していたのかと憤りを感じられたのでしょうか。いえ、現在も憤怒の檻の中にその身を置いていらっしゃるのでしょうか。K様、あなた様への愛に誓って申し上げますが、私は何も隠していたわけではないのです。真実、忘れていたのです。己が罪を記憶の底に封じ込めていたらしいのです。それがあなた様からの天にも昇る申し出を受けた夜、湧き上がる泥水がそれを押さえつけている石の隅から、じわじわと溢れ出て来るように、その記憶が甦ったので御座います。その時の私の衝撃といったらどれ程のものだったでしょう! 全身が震え麻痺し、己への果てしない憎悪と共に私は眩暈を覚え、その場へ倒れこんだほどです。そしてその震えは一昼夜続き、その憎悪は今も未だなお私の心に潜んでいるのです。憎悪が心臓をチロチロと舐めるたびに、私の全身はまたも震えあがるのです。恐ろしい罪です。許されざる悪です。それでも私はここに告白致します。私の精神を心を魂を、そして命を削って事の全てを記します。K様、私はあなた様がとうに私を見限っている事を願います。ああ!
作品名:告白 作家名:有馬音文