告白
親愛なるKさまへ
無礼をお詫び致します。
突然にあなた様の前から姿を消した私を、あなた様はどのように思っていらっしゃるでしょうか。憤っていらっしゃるでしょうか。蔑んでいらっしゃるでしょうか。それとも嘆いて下さっているのでしょうか。どれもきっと違う事で御座いましょう。なぜなら私はただ去っただけではありませんものね。私はあなた様に結婚を申し込まれた翌日から、あなた様の前から姿を消したのですから。これだけは明言させて頂きますが、私はあなた様を愛しています。狂おしい程に愛しているのです。神に誓ってです! あなた様から結婚というお言葉を頂いた時の私の心を、その心情をお分かり頂けますでしょうか? いいえ、分かり得るはずも御座いません。私の心は、その魂の喜びは決して言葉などで言い表す事は出来ないものだからです。そうして言葉として得られないものを、どうして他人が理解出来るでしょうか。伝えられるというのでしょうか。
K様、親愛なるK様。私は今からあなた様に私の罪を告白致します。この手紙を最後までお読み下さったならば、私が何故あなた様の元から、それはもう突然に消えたのかが分かって頂けると思います。私はあなた様の情が欲しくて筆を取っているわけではないのです。何の理由も無く消えてしまった私を、もしもまだ可愛いと思って下さる御心をお持ちだとしたら、その御心を粉砕する為に書いているのです。私のような女が消えた事で、少したりとも御心を煩わせたくはないからです。私のような女を妻になどしなくて良かったと、安堵して頂きたいのです。私はあなた様の名誉を守る為に、私の罪を告白するのです。
K様、高潔なあなた様にこのような文面を見せる事こそが最早罪で御座います。しかし、このような罪は私が過去に犯した罪に比ぶれは取るに足らない事にすらなるのです。K様、どうぞ御心を落ち着かせてからお読みになって下さい。そして叶うならばすぐさま軽蔑し幻滅し、私と言う存在そのものをお忘れになって頂いて、その続きなど読まないで頂きたくすら思うのです。
告白致します。K様、
私は人を殺めております。