Zero field ~唄が楽園に響く刻~
「あー、その話ねぇ、ガーディエッツが滅ぼされたって話で、うちの国がやったって思われているらしくてねぇ、ホント迷惑な話だよねぇ、まぁ旅人のあんた達にゃ関係ないことでしょうけどね」
シオンはうまい具合に話を持ちかけ、亭主も全く警戒する事無く喋ると、さっさと自分の持ち場に戻っていった。
レオンはこういう能力に関しては、感心できる物があるといつも頬杖をつきながら考えている。
今とても待ったりとした気の抜けた顔をして紅茶を飲んでいるシオンは、情報収集、悪知恵、悪戯などに関してはエキスパートとも言われていたほどらしい。
レオンはどこか可笑しくなって、急に笑いが込み上げてきた。
「まぁ、マイペースでも良いよな」
「?どうしたんですの?」
「べーっつにー」
「ふむ、確かに強いですね…それがデステニアの力ですか?」
苦戦しつつもショウ達は、男を跪かせるところまで追い詰めたのだが、全く動揺する様子がなくむしろ薄気味悪く笑っている。
どうやら、負ける事が無いと言う確信を持っているようだが、それははったりではない様だ。
「自然回復…精霊の加護を受けているのか、精霊を食らったのか?」
ショウが始めの方につけたはずの傷跡が消えてることに気付き、直感で男に投げかけた。
男は不適に笑い。
「食らったとは縁起でもない、取り込んであげたんですよ、今まで出会ってきた精霊を全部!」
とても楽しげにそう答えるとゆっくりと立ち上がり、目を見開いた時、目の色が変わっていた。
「どうですか?不思議ですか?私の目はどんな色にでも変わるんですよ」
彼が瞬きする度に、両目の色が赤、白、水色、紫、青、黒、緑、茶色と言う順番で色が変わっている。
相変わらず、不適に笑ったまま、むしろ声を出して笑い始めた。
「い、一体…その色…もしかして全色の精霊を…?!」
テンが動揺しているが、ショウは自分で冷や汗を流している事に気付いていた。
そもそも、ショウ達はデステニアであるものの、潜在的能力以外使った事がない、むしろ、潜在的能力でさえ使ってる意識がないのだ。
先ほどの男の台詞にショウは軽い動揺を見せている事になる。
ショウ達はレオンのように、まだデステニアの力をあまり理解できておらず、どう使うかを知り得て居ない以上、今目の前に居る敵に勝てるかが分からなくなっていた。
精霊を食らった者は、加護を受けるだけとは違い、精霊の力の50%近くを身に付けることが出来るのだが、一部の精神が欠落する事が多いのだが、彼は大量の精霊を取り込んでいるらしく、彼の言動も納得の出来るものとなっていた。
しかし、それだけの強さを持っている事になるので、先ほど苦戦していたショウ達に勝機はあまり見えてこないのだ。
(デステニアの力…か…こんな相手に今の俺で勝てるのか…?)
「ショウ…逃げよ?今の私達じゃ、到底敵うはずないよ…」
「テン…分かった、ここは逃げよう…」
テンはショウの横に立って小声で話しかけた。
男は未だに笑っていてショウ達の密談に気付いてる様子はない。ここまで笑う事かどうかは分からないのだが…。
ショウもそれに同意するように、ゆっくりと頭を縦に振り、「せーの」と言う合図で後ろに跳んでそのまま逃げ去ると言う事を決定させた。
そして、テンが息を整えて、合図を出した。
「せーの…!」
それと同時に二人は跳んだ。
.おまけ.
ショウ「えっと、ここはどこだ?」
テン「なんか置手紙あるよ?」
シ「置手紙って………この世界の鍛冶屋について教えとけ…って誰の字だよ汚い…」
テ「とりあえず、この世界の鍛冶屋について教えれば良いの?」
シ「そう見たいだけど…誰にだ?」
テ「……あ、ホントだ」
シ「まぁ、とりあえず、話さないとここからは抜けれそうに無いから話すだけ話すとするか」
テ「そうね、そうしましょ、えっと、何から話そっか?」
シ「んー、とりあえず、鍛冶には幾つか種類があるんだ」
テ「あ、その話しね。
一から作る”作成”、防具や武器などを直す”修理”の二つが基本でしょ。
他にも武器や防具に属性を付ける”付加”、武器に別の武器の機能をもたせたりする”改造”、武器や防具の精度を上げる”強化”の3つがあるでしょー」
シ「俺ができるのは弓などの遠距離系、軽量や魔装の防具と言った作成と他全部だな」
テ「いやぁ、ホントに優秀だったわー、私ほとんどサボってても全部ショウがやってくれるんだもん、助かってたわー」
シ「ホント仕事しろよな、お前の分も何でもかんでも出来るようになっちまったんだからな、お前の責任だ」
テ「別に良いじゃない、それで損してる事なんてなんだから」
シ「ま、まぁ、そうだけどな」
テ「それで、私が出来るのは、作成の武器防具全般、修理、強化だけなのよ、仕事サボって治癒術学ぶので忙しかったから、コレくらいしか出来ないのよねー」
シ「ホント鍛冶屋の従業員としてどうかと思うぞ、ただでさえ、俺とお前の二人しか居なかったんだから」
テ「いいじゃない、今は治癒術かなり役立ってるんだから」
シ「はいはい、さて、ちょっと詳しく話していくとするか」
テ「はいはーい、ショウ先生!私そこまで詳しく知りません!」
シ「だから、治癒術勉強するのも良いけど、しっかりと家の手伝いくらいしろって言っただろ?えぇ?」
テ「ご、ごごごご、ごめんなさい…」
シ「作成はそのまま、ただ武器や防具を一から作って行くんだ。
武器は大きな部類で、近距離、中距離、遠距離、媒体の4種類で、防具も大きく分けると、軽量、重量、魔装、武装の4種類。」
テ「えっと、近距離は剣やグローブ、斧かしら、それでそれで、中距離は槍、鞭かな」
シ「遠距離は弓、ブーメランで、媒体は杖、指輪と言った感じか、まぁ他にも色々あるがな」
テ「えっと、軽量は軽い防具で身動きが取りやすい服とかでしょ、重量は重い防具で守りを重視した鎧とかでしょ?」
シ「あぁ、それで、魔装は軽量の派生で、自分の魔力を込めたり、相手の魔力に反応したりして、主に魔力を使う戦いで役立ったり、魔法に強かったりする防具だな。
それに対して武装は、重量の派生で、防具自身に武器などが仕込まれてる、完全戦闘用の武器と防具を兼ね備えた代物なわけだな」
テ「修理は文字通り修理する事でしょ?」
シ「そうだ、それで、付加は武器や防具に属性を持たせて、それぞれの属性に強くすることが出来るんだ。
付加に関しては、その武器さえあれば、自分の魔力と関係なく、属性攻撃できたり、属性防御に適したりするんだ。」
テ「確か、私のこの服には、ショウが闇の属性付加してくれたから、普段の弱点属性を打ち消してくれてるんだっけ」
シ「まぁ、そうだけど、代わりに、普段強い属性も弱点で多少打ち消されてるけどな」
テ「そのベストは私お手製だからね、滅多に手に入らない素材で作ってやたら滅多に付加強化したから、丈夫も丈夫、そこらの鎧並の防御力とローブ並の魔力防御持ってるよ」
シ「俺の体質上、打たれ弱すぎだったからな、その分回復は早かったんだが、このベストが出来るまではよく死に掛けてたな」
テ「そうそう、その度に永い眠りに入っちゃって、家の仕事をせざるを得なくなって…」
シ「それは元からやる必要があったんだろうが」
作品名:Zero field ~唄が楽園に響く刻~ 作家名:異海 豹