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Zero field ~唄が楽園に響く刻~

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「は、早速フェイターを作りに行くのか…俺もつれてけよ」
短く笑いシャンデリアから下りると、男の後ろについていく。
「勝手にしろ」
しばらく歩いていると、一つの扉の前までやってきた。
少年が扉を開くとそこには大きな部屋が広がっているのだが、そこはとても狭く感じれる場所だった。
少年はこの部屋に来る度、とてもつまらなそうな表情を浮かべる。
扉が開かれた時、中に居る人たちはビクッと体を震わせながら扉の方を向いて、悲しそうな表情を浮かべる者、怒りの表情を浮かべる者、色々な人間が居た。
部屋の中は暗く、光は中央の天井から下がっている灯りだけで、それによって照らされた部屋の中は、いくつもの鉄格子で幾つかに区切られており、狭く感じさせるのだ。
「以前、魔族のフェニックスのフェイターを逃がしてしまったが、今度こそ魔族のフェイターを戦力に入れたいものだな」
男が独り言のように喋ると、
「逃がしたそいつを俺に始末しろって言うんだろ」
少年も独り言のように喋っていた。
男が区切られた鉄格子の中の一つに近づくと、一人の名前を呼んだ。
「ティア・アロンス」


朝日が眩しくまだ日が見えて間もない頃、少年は家の隣の井戸から水を汲み顔を洗った後、柱に軽く寄りかかりながら空を眺めてボーっとしていた。
ボーっとしているだけで、特に何もする気は無いらしいが、少年以外に起きている人物は居ないようだ。
と言っても、少年は結局仮眠すらとっていなかったので早起きとも言えないのだが、夜特にやる事も無く見張りをサボって散歩なんかもしていたくらいだ。
見張りをサボると言っても、結局風の搭の周りには簡易な魔物避けの結界が張ってあるので、あまり魔物が来る事が無く少年はそれを知った上で散歩に出たのだ。
少年が散歩してる間のほうが魔物と出会っていたので、魔物避けの結界は確かに有効と言うことは少年はその効力を実感していた。
少年は散歩をしていて気付いた事は、ここら一体の魔物は夜くらいにしか空を飛ぶ魔物を見る事が無いと言う事なのだが、少年が見ている空にはちらほら魔物が飛んでいる。
「なんかまた一波乱ありそうだな…」
少年が特に何かを考えるでもなく、ただ単に自然と口から零れた独り言だった。
「んにゃおーショウゥー…」
珍しく早起きしてきた少女が締まりの無い声で少年…ショウに挨拶していた。
と言うより、もはや挨拶がおはようとは聞こえてこなくなっているところを見るとまだ寝たりなさそうだ。
ショウは短いため息交じりに笑うと少女…テンのために井戸の桶を引っ張りあげてくる。
「あいあとぉ…ふえたっ!」
テンは呂律の回らない声でお礼を言うと、桶の水に手を触れた瞬間に引っ込めてしまった。
寝起きのテンには少し冷たすぎたようだが、それでテンは少し目が覚めたようで、水を両手で掬い上げて顔を洗っていた。
ショウはさっき自分が使ったタオルをテンに手渡すとテンはごしごしと自分の顔を拭き、小さく息を吐き出した。
「ぷはぁ…おはよ、ショウ」
再び挨拶をすると、テンは久しぶりにゆっくり眠る事が出来たおかげなのか、とても良い笑顔をショウに向けていた。
と言うのも、テンはレオンを袋叩きにした後、ファナに呼ばれてファナと一緒にベットで寝ていたのである。だからなのか、テンはかなりの上機嫌だった。
上機嫌ついでに、テンはショウに昨日の夜ファナと話した事や、その姉妹達と遊んだ事をとても楽しそうに笑って話していた。
そして、しばらくすると今度はファナとサリナが井戸のところにやってきて、楽しそうに話してるショウ達を見て二人して急に目が覚めたのか、大声を上げた。
「あー!ずるいです!何で何でテンとショウ様が何でこんな朝早くから楽しそうに話をしてるんですか!」
「あー!ずっるーい!私も話したーい!何で起こしてくれなかったのー!?」
「は、だーれが私のショウを他の女に手を出させるって言うのよ。バカじゃないの?」
上機嫌でも言う事はしっかり言うテンに、二人は怒ったらしくそのまま三人でずっと言い争いをする事となった。
ショウはその三人を無視して、家から少しはなれたところに張ってあるテントの中に入り、寝たフリをしているレオンを起こした。
「なぁ、ショウ?ホントにあの二人だけをアルセートレートの首都セーツレーノンに行かせていいのか?」
レオンが寝転がったままショウに問いかける。
「あぁ、サリナがなんか率先して行きたいって言ったたし、ガーディエッツの生き残りで姫なら説得しやすいだろうし、だから適役だろうって」
「でも、何で護衛にあのガキ一人なんだよ」
ショウが昨日のあの後の話を思い出しながら、もっともらしい説明をつけて答えると、今度が本命なのかまだ寝ているイナを見て次なる問いをした。
ショウはイナをチラリと見ると小さく笑うと、イナは寝返りを打ち、ショウはレオンに向き直る。
「イナだからこそ大丈夫なんだよ。イナ自信も言ってた様に、この中で魔力の最大容量は俺たちの中で一番だ」
ショウが少し笑いながらレオンに言うと、レオンは口をへの字にして少しの間黙っていたが、長い間戦えるからな、と言ってショウに背を向ける様に寝た。
ショウは小さく笑うと方をすくめ、そろそろ皆を起こす事にした。


塔を出発してからもう三日経っていた。
「死ななければ絶対また会えるよ、だから、またね」
「それではショウ様達もお気をつけください」
イナとサリナと塔前で別れた時ショウ達に言った言葉である。
今は、先頭をショウとリョウが歩いていて、その後ろをテンとフィル、そして、レオンの三人がついていく形になっている。
この中にサイスが居ないのは、フォミニンと一緒に居る事をフィルとサリナ、テン、イナが強制的に決定させたので、今ここには居ないサイスは、今後、五姉妹が良い様に扱き使うだろう。
「サリナ様…本当に申し訳ありません…最後まで付いていけず…」
「いいえ、気にすること無いです…国が復興した時に子供を貢献していただければそれで」
これはサリナとサイスの別れる時のやり取りであるが、サリナはとてもいい笑顔でサイスに言い放ち、サイスはそれに感動していたが、端から見れば厄介払いに見えなくなかった。
そんな事を思い出しながら目的地であるポーテリッツの首都バーミリアを目指していた。
レオンは出発してから寝る前さえもフィルとテント三人で、シオンがどんな奴なのか、そんな話を面白おかしく話している。
昼頃にその笑い声が魔物にこちらを気付かせてしまっている事なんてその三人には全くもってお構い無しの様で、現れる魔物を次々と倒して言っている。
レオンの魔法は詠唱を必要としない代わりに、接近戦になってしまう傾向があるが、レオン自信足が速く、魔法の効き易い魔物を軽々と倒せる魔力を持っている為、かなり強い。
フィルもあの塔での戦いから物理攻撃をよく使う様になり始めていて、トリガーがなくても格闘技だけでもそこそこ戦える様になっていたが、やはり、サリナに勝てるほどではなさそうだ。
テンに関しては、何か吹っ切れたのか最近では真眼をちょくちょく使う様になっていたが、ショウはそれがどこか心配だった。