Zero field ~唄が楽園に響く刻~
ちなみに、フェニックスは、5姉妹の家の中でずっと静かに眠ってもらっていた。
5姉妹のファナ以外の皆はそれはもう退屈そうに勝負の行方を見ていた。
「ねぇねぇ〜…ショウ〜そろそろいいんじゃない?」
「それもそうだな」
二人が、1回強く武器をぶつけ後ろに跳んでお互い距離を離すと、お互い気合を入れなおすように深呼吸をした。
「あら、そろそろ見れるかしら、いい勝負」
テンが出っ張りの上で、笑いながら楽しみにしていた。
「セカンドアーツ・フロウソード」
静かな声でファナが呟く。
レオンはこれはもう楽しめそうだと期待を胸に、笑顔を浮かべている。
今度ショウとファナが土を蹴った時、ファナが何故か後ろに飛ばされてしまっていた。
姉妹とサイス、あと数名は目を見開いて驚いていたが、数名は「ほほう」と感心な声を上げた。
ショウはと言うと、ファナを飛ばした後、そのままの勢いを活かし、ファナが受身を取って立ち直ったその真上の遥か高くにその姿があった。
ファナは前方に見えるショウの姿を睨みつけてしまっていた。
アル戦の時に使った剣に魔力を込め、分身を作り出す技である。
あの時は、天井に剣を突き刺し、天井にぶら下がっていたが、今回は高く跳び上がっていた。
「鏡華…あの時とっさに思いついた技だけど、それなりに使えるじゃないか…」
上空で微笑むショウはどこかうれしそうだ。
さっきまで空中に浮くように飛んでいたが、やっと落ちていった。
ファナが肌で感じたもう一つのショウの魔力に、条件反射で後ろに跳び、ショウの剣の直撃は免れた。
「うひゃぁ〜…服があらららら〜…」
ショウが縦一文字に地面ごと切り裂いてしまったため、胸部をかすったファナの服は、胸の辺りが開いてしまっていて、胸が見えかけている。
「あと一息!」
と叫び声をあげたのはフィルとサイスで、フィルはイナに後頭部を蹴られサリナに肘鉄を腹部に食らわされ、サイスはフォミニンに腕の関節に攻撃を受けた。
その後、他の3人から至る所に攻撃を受けたのは言うまでも無いだろう。
そして、その状況を作ってしまった当事者のショウは、左手で顔を押さえている。
そうしているショウを見て、チャンスと思ったファナは極端に短い詠唱をすると中級魔法を次々立て続けにショウにぶつけて行く。
どうやら、剣の力と連続詠唱のうまいコンビネーションにより、極端に魔法の詠唱を縮める事が出来ているのだろう。
そして、魔法をかわす事に集中していると、ファナが地面を蹴って息つく暇もなくショウの右肩に左手が置かれていた。
「通り抜ける、回る風、旋風!」
その叫びと共に、ファナの体はショウの後ろにあり、ショウを回るように切り刻んでいた。
やった!と思ってショウの方を振り返った時には、ショウの姿はなく、後ろから勢い良くファナを上空に飛ばす。
さらに、ファナより高く飛び上がり、すれ違いざまに数回斬り、まだ上がってくるファナを見下ろすようになる。
足の裏に左の剣をつけると剣蹴り、すごい速度で地面に落ちてくる、またすれ違いざまに数回斬っているのだが、速過ぎてファナの体が斬れるのが極端に遅い。
そこから、飽きもせずまた飛び上がると1回目と同じように斬る。
上空で止まったところで左の剣を取ると、ファナが上空で止まる。
ショウの方が落ちるのが早く、ショウとファナが落ちていくところで、ショウは容赦なく落ちながら何度も斬りつける。
最後に、地面に落ちる寸前で、両手の剣で×の字に切り裂いた。
「まぁ、むごいな…」
1回の技でやっている事が相当酷いという事もあり、リョウが感心しながらも声を漏らした。
テンは思いっきりスタンバイしており、何時でもそこに跳んでいけるように身構えていた。
他の皆は口をポカーンと開けているしかなかった。
正直さっきの技は1分と少ししか経っていない、そんな短い間にそれだけの事が起こっていた。
「こ〜さ〜ん…私じゃ勝てる気がしないよぉ〜…」
そう言ってもはや服がボロボロで立ち上がると、サイスたちが興奮する参上になっているファナが、少し涙を浮かべて仰向けに頭を上げてショウに言う。
あれだけの事をされていて、まだ息があるのだからファナの生命力は侮れない。
「結構本気だったんだがな〜…まぁ、ちょっとやりすぎた、すまねぇな」
と苦笑しながら左手を上げると、テンが跳んできた…と言っても着地してから足りなかった分を走り寄ってきた。
テンが治療を行っていると、イナとイブがファナの着替えを持ってきた。
ショウはちょっとバツが悪そうに頭を掻きながらリョウ達の傍に戻っていった。
「良くあれほどの早業を思いつけるな…」
とリョウが少し面白そうに尋ねると、ショウは右手を顎に当てると少し考えた後口を開いた。
「まぁ、瞬華・月刃衝?ってのがしっくり来るかな?」
「いや技名は聞いて無い…」
「だよなー、えっと、まぁ、なんとなく臨機応変に動いてたら、そのまま技が完成するからなー。
まぁ、ああいう大技って条件多くなるから使いづらいけどさー…」
とショウが、少し肩をすくめてため息と共に軽い笑を漏らした。
「違いない」と釣られるように笑った。
.おまけ.
「あの後あの人は今!さて、こちらはリポーターのカイトです!
Generetorのカイトです!」
「で、私はテツィラ…Generetorだけど…」
カイトはノリノリで、テツィラは仕方なさそうに、仕事している。
「はい!では、アガートルーアさん!」
「あ゛?!お前は誰だ!?何故俺の名を知ってるんだ!?」
いつかの伊達筋肉男である。
「リョウさんに一撃で負けたアガートルーアさん」
「何でその事をお前を知っているんだあぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
頭に来た伊達筋肉男。
今にも腕を振り上げテツィラに殴りかかりろうとしていた。
もちろんそれは隣に居たカイトによってあくびしながら受け止められた。
「伊達」
テツィラが嘲笑う様に吐き捨てる。
カイトが言いすぎだと言わんばかりに、テツィラの額にデコピンをした。
「ななななな…何の用だよ!」
観念したのか、伊達筋肉男が焦ってさっさと用件を済まそうとしている。
「今は何をしているんですか?」
「ここ(アートレスタ)で魔物討伐をやってんだよ!もういいだろ!開放してくれよ!」
笑顔で手を振るカイト。
一目散に逃げていく伊達筋肉男を見てテツィラが鼻で笑う。
「以上、Generetor読者サービスおまけ、あの後あの人は今!でした」
「運が良ければまたどこかでお会いしましょう〜」
作品名:Zero field ~唄が楽園に響く刻~ 作家名:異海 豹