小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

Zero field ~唄が楽園に響く刻~

INDEX|42ページ/59ページ|

次のページ前のページ
 

17唱、世界に背く影の迷い歌





「果て無き空に何を望むだろう…希望、絶望…夢、現実…自分の事か、他人の事か…幸せになる事か、他人の不幸か…
 誰に何を、どこの空に何かを…望み、期待し…果てに、終わるか、始まるか…
 叶えるのは、誰か、空か、鏡か、星か…壊すのは、誰か、海か、石か、現実か…
 さぁ、貴方は叶えるか、壊すか…見せて、貴方の選ぶ道、選んだ夢…あの男の手の内で踊らされるのか、剣を突き立てるのか…
 見せて…もう一人の私…私に、全てを…見せて…」
静かに、それはとても静かに響く。
一人の少女は不適に笑い、いとおしそうに自分の首に巻いているマフラーに触れていた。
「うふ…ハハ…アハハ…アハハハハ…好き…だーい好きー!…アーハハハハハハハハハハハハハハ…」
少女は塔の最上部に立っており、少女は唐突に叫ぶように、大声を上げて笑い出した。
少女から発せられる魔力はおぞましく濃く計り知れない物だった。


「なんか僕の事、勘違いして無いですか?」
デリスはとても怪訝そうな顔を浮かべ、テンを睨んで言った。
テンは不思議そうな顔で首を傾げているところを見ると、何の事を言われているのかさっぱり見当が付いていないようだ。
デリスはその行動がさらに癪に障ったのか、ずっとフワフワ浮いていたのに、床に降り立ち盾を背負う。
「あー、キレた…もういいよ…殺す気なかったけど…死んでよ」
そう告げた途端、テンの周りに幾つかの魔法が同時に発動した。
「え?うそ!詠唱なしって!」
驚くテンは、何とか逃げようとするが、かわし切れずに数箇所魔法を受けてしまった。
しかし、デリスはもう休むつもりは無いらしく、ドンドン魔法を放ってくる。
全て下級魔法とはいえ、デリスの魔力は高く、少しだけでもそれなりのダメージを受ける上、数を撃たれてはかわし切れないのである。
何度か魔法をかすりテンの動きが鈍ってきた頃、結界が弾け飛び魔法が止んだ。
「いい感じの登場だよね〜♪」
「待たせたな」
「これは…!?」
デリスの周囲に数十のナイフを展開させ、デリスの身動きを止めたイナはとても陽気に、いつも通りだった。
結界を壊したであろうリョウも、ただ立っているだけだったが、いつも通りであった。
驚くデリスを余所に、そんな二人を見たテンは安心したように笑った。
「遅いわよあんた達…」


「神って言うくらいなんだからもっと強いと思ってたんだけどなー…」
大剣を背中に担ぐエイトは、余裕でマリーに勝利していた。
「まぁ、あたい一人だけじゃ、風の刃、風の雷の狭間の双子妖精、獅子の心には勝てないわ…」
とマリーは少し皮肉を言うように、軽い負け惜しみを言う。
そして、エイトの後でも、同じようにタットに勝利しているサリナが居た。
「私に槍でやりあおうと言うのがそもそもの間違いです」
と少し無理を言うサリナは、ことごとく槍の攻撃をかわしたのである。
「あんた、うちが槍使いなのを良い事に、獅子の心にマリーちゃん任せたでしょ」
タットの指摘は的確で、サリナは満面の笑みで自信満々に頭を縦に振った。
結界は上からゆっくり消えて行き、外が見えるようになった。
「最後に教えて?何でうちの攻撃をあんなにかわせたの?」
タットは当然の疑問を、サリナに言うとサリナはほんとに自信満々に微笑み、
「私の国は基本槍だったので槍の使い方はほとんど熟知してます」
と言う声を聞くフィルは、結界を壊せずにぐずぐずしていたところに、結界が消え戦いが終わっていて、出番を失い蹲っていじけていた。


6人は、シルフィー達の前に立っていた。
「貴方達は強いわね、素直に5対3で戦ってれば良かったわ…」
と少し後悔する様にアルが言い、ショウとテンの前に歩み寄る。
「貴方達は、純律唱者(ゼロシンガー)だから、貴方達にこの唄を送るわ…」
ショウとテンの手を取り、二人にだけ聞こえる声で囁くと、ショウの左手とテンの右手が光りショウ達の頭の中に唄が流れてきた。
ショウとテンは光る手で手を繋ぎ、目を瞑ると深呼吸をして、その唄を二人で歌い始めた。
………
その歌はみんなの心に安らぎを与え、どこかスッキリさせるものがあった。
「その唄は、フェニックスから託された神の世界地図の1つなの」
アルは微笑んで言うのを聞くと、フィルが不思議そうに後から疑問の声を上げる。
「魔導律は、魔法のようなものなんだろ?なのにさっき何も起きなかったのは…?」
それは皆感じていた、ショウとテンもその疑問は抱いていたのだ。
皆がアルに視線を集中させ、アルは仕方が無いなーと言わんばかりに方をすくめ、語り始めた。
「魔導律、貴方達の言う魔導律、実はその魔導律は、作られた魔導律なの。
 作られた魔導律は、世界の意思を呼び出す力で、魔法の何倍もの威力を持っているわ。
 けれど、それは結局人の作った魔導律…本当の魔導律には魔法のような効力は全く無いの、純粋な唄なの。
 だから、私達神は、区別をするために、神の魔導律と呼び、神の世界地図と言う伝説を作ったのよ。
 でもね、それが裏目に出て、完全に理解出来て無い人たちが作られた魔導律を巡って戦争が起きたわ。
 それを止めたのは、オメガと言う少年、オメガは神々全てに会い、話を聞いて事実を知り、戦争を止めるために全力を尽くしてくれた。
 しばらくして、終戦を迎え、オメガは伝説の英雄となった、でも、力を持つ者には影が存在する。
 陰の力は光の力を上回り、抑えることが出来るのは、神の世界地図だけだったの。
 その時唄ったのは、神の世界地図を唄ったのは、当時13歳のオメガで、彼は純律唱者だったわ。
 神の世界地図を唄えるのは純律唱者だけで、そして、神の世界地図は10つの唄が集まってやっと本当の力が発揮されるのよ。」
と最後は自信満々に胸を張り語り終わったアルだが、一部はさっぱり話が掴めていない者が居た。
と言うのも、分からない単語が時々出てきたことが原因だろう。
「えっと、純律唱者ってなんだ?」
恐る恐る手を上げるフィルは疑問を投げかけた。
隣で頬を人差し指で恥ずかしそうに掻いてるさりなも分かっていないようだった。
「魔法の使えない魔導律の歌い手の事を示すの」
と答えたのはタット。
「オメガとはだれだ?」
リョウがいつも通りの口調で聞く、実のところイナも分かっていない。
だが、今回はフィル達は知っている様で少しバカにしたように二人を見ていた。
「グレインゼウセシル・アリソン・エンバーデンの息子になるわ、今はもうこの世に存在しないわ」
マリーが答えると皆は眉間にしわを寄せたが、ここで警戒したところで、もう居ないのなら意味が無い。
「つまりは、あの男が影のオメガを復活させようとしている今、俺たちに神々に会えって言いたいんだな」
ショウが笑って言うと、シルフィーたちは微笑んで頷いた。
「あ、そうだ、サリナ姫様神玉を出して」
言われて、サリナは不思議そうに神玉を前に出すと、城がその神玉に矢を放ち神玉が砕け散る。
皆が驚いていると、見る見るうちに破片がサリナの手元に戻って行き、完全に戻った時には元の球体ではなく、クリスタルの様な形になっていた。
「それ、姫ならシロたち呼べる」
つまりシロは、一時的に力を貸すために召喚することが出来ると言いたい様だ。