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Zero field ~唄が楽園に響く刻~

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「では、始めましょうか」
とアルがニコニコ笑って静かに告げるとみんなは構えた。



「ふん、雑魚いな俺の敵にもならないな」
そう吐き捨てたのはリョウである。
相手になっていた鎧は戦い始めてまだ数分しか経っていないが、もうすでにボロボロに切り刻まれている。
鎧の動きは鈍らないが、リョウにとってはとても遅すぎる。
リョウにはエイスティーナ流儀を、完全に成功させるための秘訣を生まれた時から持っている。
鎧が剣を振り上げリョウに向けてまた振り下ろそうと、動き始めた瞬間に、
「遅い」
と短く言うと、ゆっくり最低限の動きでかわすと、鎧に鞘で叩きつけ吹き飛ばす。
壁にぶつかるとガシャガシャと音を立てて、崩れ落ちる。しかし、ボロボロの鎧にもかかわらず、まだ動こうとまだ戦おうと、立とうとしている。
もうボロボロにされているのにまだ戦おうとする鎧を見て、リョウは静かに思った。
(こいつはどうして・・・どうして勝てないと分かっていてこんなに俺に挑んでくるんだ・・・)
「シ・・・ル・・・・・・フィ・・・・ィ・・・・・おレ・・・・・・・まも・・・るんだ・・・」
急に聞こえてきた声に、リョウは少し戸惑いつつもそれが何の声なのか、どこから聞こえたのかはすぐに判断が付いた。
リョウはギシギシと音を立てながらゆっくり立ち上がる鎧に目をやると、刀を鞘に収めた。
戦う意思を失ってしまったようだ、それでも、鎧はそのままリョウの方に剣を引きずりながら歩いていく。
鎧はリョウの目の前に来ると、剣を振り上げリョウの肩目掛けて振り下ろした。
が、リョウは一歩も動かず、その剣を諸に肩に受け、そこからゆっくりと血が流れ出てくる。
それでも、リョウの目つきは変わる事無く、ジッと鎧を見続け眉一つ動かさないでいた。
「な・・・ぜ・・・・?」
「お前の気持ちが痛いほど分かるからだ、いや、こんな剣の痛み以上に、お前の心の痛みは分かるつもりだ」
鎧の声にリョウは静かにそう告げると、剣を上からぐっと肩に食い込ませるように、どんどん力を入れていく。
そして、ドンドン広がる傷口から徐々に血の量が増えていき、それはまるで、
「やめろ!」
そう叫んだのは鎧で、剣を消滅させてリョウの傷が広がるのを抑えた。
リョウの手は血だらけで、完全に骨すらも斬っている。
「血・・・お前の・・・・涙み・・・・・・・たい・・・・・だ」
と言うと鎧は光となり、リョウの肩くらいに集中していった。
すると傷が塞がり、リョウは驚いてそれを見ていると、鎧の声が部屋全体に響いた。
「シルフィーを大切に扱ってやってくれ・・・」
リョウは俯いて右肩を右腕で抑えながら暗い表情を浮かべつつ、転がった玉を拾い上げた時、2階からの扉が勢いよく開かれた。
「また・・・俺は託されたのか・・・」




.おまけ.


「やっとやってきたんだぜ!俺の出番がやってきたんだ!」
緑の少女が大きな声で勢いよく個室に入ってきた。
そんなテンションの高い少女と対象に、個室の中央においてあるテーブルに突っ伏して、影を背負っている桃色の長髪をした少女がいた。
緑髪少女がそれを見て固まっていると、桃色少女が口を開いた。
「良いですわね…主人である私を差し置いて先に名前を明かせるなんて…騎士としてどうなんですか?えぇ?!」
緑髪の少女がその部屋から逃げ出そうと、走り出すために回れ右をした瞬間、肩にとてつもない威圧感を持った手が置かれた。
それにより緑髪の少女の動きが止まり、恐る恐る後ろを振り返ってみると、
「だ〜か〜ら〜、貴様はどうなんだよって…言ってんだよ屑」
さっきまでの口調改め荒い口調になっていた。
「えっとですね、それは俺・・・私の軽いミスでございますです」
汗をダラダラかきながら、焦って言葉を何とか繋げている。
「えっとですね、方向音痴の私が悪いのです!すみません!ごめんなさいぃ〜!」
「ほう・・・その罪、後で償ってもらいますわ」
と元の調子に戻ると、ニコニコ笑っている。
(怖い・・・)
と心の中で思った緑の少女だった。


.おまけ.


クローツについて・・・ね・・・
これって、結局どうなってしまったのかな?
っとその前にね、私の事を紹介するね。
私は黒井 茨、たまたまこの世界にやってきた、世界を自由に行き来できる15の女の子よ。
ちょっと興味の湧いたこの世界に留まって、数年前に書かれた本を読んでいるの。
その物語はこの世界の実話で、誰かが残した物なのかは私には知った事じゃないの。
さて、あなたたちも気になるでしょ?セントバイトに滅ぼされた後のクロ−ツが。
私が今からその時代に跳んで教えてあげる。
大丈夫、このヘアピンの力を使えば、その時代の人間に見られることなく、その時代から出て行けば、私が居た痕跡は全て消せるの。
だからちょっと私と一緒に冒険しましょ?
……………
あらあら悲惨ね…。
生き残りは…居ないみたいね。
魔法が使われたのかしら?至る所に氷の欠片や火がついたままね…。
それに、兵士がまだまだここをうろついているわね…。
ちょっと門のところまで行ってみましょう?
……………
あらら?この大きく音を立てて火柱を作っているのは…フ…フフフフフフ……このクローツの人間みたい…
クローツの戦闘力ではセントバイトの兵士は倒せなかったのね、一人も犠牲になった様には見えないわ…。
あ、そろそろ華ちゃんのところに戻ってあげようかしら、それではまたいつか、会いましょ?
最ももうあなたと会う事は無いでしょうけど…フフフフフ…。