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Zero field ~唄が楽園に響く刻~

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と二人して真剣に話していたが、クロナの顔は惚れたとかではなく、どうでもいいという色が見えていた。
中央に参加者が並び、短く名前を呼ばれていく、とてもじゃないが奥まで届いてるとは思えない、周りはとてもうるさいのだ。
実際クロナでさえ全然声が届いてない。
紹介が終わってそのまま1回戦Aの組を残してステージを後にする事になった。
「クロナさんって言うんですね、戦ってみたいです」
と横を歩いているサニーが急にクロナに愛想笑いをして話し掛けた。
クロナは笑みを浮かべて頷くと、すぐ近くのベンチに座る。隣にサニーが一緒に座る。
お互い一息を付くと、目を瞑った。
「私、貴女とは気が合いそうね…」
目を瞑ったままサニーに呼びかけると、サニーも目を瞑ったまま答えた。
「…僕…セントバイトに行きたいんだ…」
それを聞いたクロナは驚いてサニーを見つめる。
サニーはそれに気付いていない様で、ずっと目を瞑ったまま続きを話し始めた。
「僕、実はセントバイトに賛同なんです…。クロナさんは五天騎士団の弐天だそうなので、こうやって安心して話せるんです。
 実際、他の人にこれを言うと皆に怒られてしまうんですよね。僕はただセントバイトの王の目指す世界を見てみたいんです。」
クロナはとても悲しい瞳で、まだずっと目を閉じているサニーを眺めていた。
サニーの言う王の目指す世界…それは、誰も住んでいない、生き物の気配がない、木々ですら根を張らない、そんな世界。
しかし、王はただ「自分の自由を追求できる世界を作る」としか言っていない。
その真実を知ってるのは各国の王と壱、弐、参天、今は亡きオメガとGeneretorだけで、これを口外する事は基本禁忌で一般人を混乱させてはいけない。
そして、セントバイトの者はセントバイト王の賛同者を見つけた場合、用事を済ませた後、国に連れて行くことを義務付けられている。
連れてきた者には大金が支払われ、セントバイトの旅人の中には、世界中から捜すために旅に出て行く者もいる。
よって、クロナは真実を告げる事は出来ず、さらに、このサニーを国に連れて行かなければならない。
クロナは弐天であるが、決して父の思考や野望に賛同しておらず、Generetorのスパイと言っても過言ではないが、Generetorを何人も殺している。
よって、クロナには今どうしていいのか分からなくなってきていた。
クロナの深い悲しみを映した瞳は、どこか遥か遥か遠くを眺めていた。


「ン〜…速いよぉ〜」
2匹の素早く動き回り攻撃を仕掛けてくるシルフェンを前にして、金髪で長髪の女性は苦戦していた。
速いだけなら良かったのだが、何より硬い、硬いから女性の右手に持っているナイフでは、ダメージを期待できないのだ。
そうやって苦戦を強いられていると、さっきまで開け放たれていた扉が急に大きな音を立てて閉まってしまった。
「え?どうしたんだろ…?」
口を開けて飛び込んできたシルフェンに、ナイフを投げ込みながら扉をジッと見つめていた。
内側は弱いらしく、もがきながら地面に落ちる。
「…硬いんなら叩き込めばいいよね〜」
と暢気な声を出しながら、もう1匹の飛び込んでくるシルフェンを蹴飛ばし、ナイフを前に突き出して魔力を手元に集中する。
「始めるよ、インフィニスサークル」
と言うと、急に女性の前方を身長くらいの円がナイフによって作られ、回転している。
もがいていたシルフェンが血を吐きながらも襲いかかろうとしてきた時、女性が右手を下ろすと、円を作っていたナイフがシルフェンに向って飛んでいく。
円はずっとそこに存在しているが、ずっとそのシルフェン目掛けてナイフが1本1本飛んでいく。
飛んでいったナイフの部分を埋める為に、新しいナイフが即座に現れる。
女性はシルフェンの攻撃をかわしているだけで、後はもう何もしていなかったが、良く見るとずっと同じ箇所にナイフが打ち込まれていく。
1匹目のシルフェンが崩れ落ちると、女性は次のシルフェンの近くに走り出す。
シルフェンが攻撃を仕掛けてくるが、それをかわしてシルフェンの首に右手のナイフで突き刺そうとする。がシルフェンの体は硬いため突き刺さらない。
女性が後ろに跳んでナイフを構え直すと、ナイフの円がまた次のシルフェンを狙い始めた。
今度はさっき女性の攻撃した首を集中狙いして飛んで行っている。
シルフェンは女性に飛び込みながら爪で攻撃しようと右前足を上げていたので、女性はそれを横に跳んでかわした時、急に魔力の風の刃が襲い掛かった。
とっさナイフで魔力のはを受け止めるが、とてもすごい威力で女性は後方に飛ばされてしまい、シルフェンはそれに追撃をかけてくる。
「ちょっとこれって一体何?!」
叫びもそこそこに飛んできたシルフェンの下をくぐってかわし、シルフェンの方向を向いた時、また高速で風の刃が飛んできた。
「うそ!後ろでも!?」
また叫び今度は完全にかわしたが、シルフェンは追い討ちをかけてくる気配は無かったものの、座り込んでいた。
女性がその体制に首を傾げると、シルフェンが大きな雄たけびを上げると、全身から風の刃を発生させて飛ばしてきた。
「そんなの無いって!」
と言う叫びと共に女性は前方にナイフの壁を発生させ、その風の刃をしのいだと思うと、後ろからシルフェンが飛び込んできて、女性の背中を引っ掻いた。
前に転がると、女性はすぐに立ち上がり、攻撃をしてきたシルフェンの方を向くと、後ろにも気配を感じて振り返るとまだ座っているシルフェンがいた。
驚いてさっき倒したシルフェンの方を見ると、倒れたままだ。
「増殖とかやめてよ…」
と弱音を吐いた時、1階への扉が開いた。


1回戦もとうとう最後の組のクロナまで回ってきていた。
女の中で勝ち残っている人達はかなりおり、男より女の方が強いではないかと思ってしまう。
女での脱落者は今のところ3人で、まだ11人中8人が残っていて、クロナが入ってきた時に声をかけてきた者達は残っている。
「お手並み拝見と いこうかしら?」
そういって腕を組んで不適に笑う女剣士は、クロナの1つ前の組み合わせで、圧勝していた結構な斧の使い手のようだ。
クロナはその女剣士を一瞥すると、一息付いてから、
「良く見てなさい」
とだけ言うと広いステージに歩いていく、ステージは広く周りを囲むように客席が設けられており、そこからの観客の声が良く聞こえる。
今回の組み合わせは、クロナとひょろい男で、剣を右に持ち槍を左に持っている。
「1回戦Pグループ、クロナ!ジャンキー!勝負………はじめぇ!」
と大きな声で審判の声がステージに響くと、ジャンキーが思い切り走ってきた。
剣で斬りかかってきたが、それを盾でしのぐと左から槍がクロナの頭に目掛けて飛んでくる。
クロナはしゃがむと踏ん張り、ジャンキーを押し退けると右手の槍で、
「遅いのよ、貴方は」
と呟いて腹部を突く。
ジャンキーはかなり後ろに飛ばされてそのまま動かなくなった。
「…………………………」
それを見ていた全ての人間がポカーンとしてクロナ達を見つめていた。
今までの戦いで、これをほど短く圧勝だった試合はなく、誰もが口を開けて驚いているしかなかったのだ。