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Zero field ~唄が楽園に響く刻~

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15唱、高く空に伸びた風の音の塔




「さて、この分かれ道どっちに行けばいいのかな…」
そう言って砕け散っている看板を見つめて、腕を組んで難しい顔をしている少女が立っていた。
「右に行ったら到着してくれそうだけど、俺の勘はほとんど当たんないから…うん、左だ。」
そう言って、草原に向かう緑の少女は目的地とは別の道を進んでいる事には全く気付いていなかった。
草原に足を踏み入れてからもずっと真っ直ぐと進んで、何も疑う事無く目的地に向かっている気分で進んでいる。
やがて、日が傾き適当な岩を見つけ、その上に立つとその上にテントを張り、寝る事にしたようだった。
その岩は結構大きく、3人ほどが上で眠れる大きさは余裕であった。
「なんっか、大分歩いた気がするし明日には着くか〜、俺の勘の逆来て良かったぜ〜。」
と言う勘違いを口にしながら少女はまどろみの中に落ちていった。


「こいつそれほど固くないようだが…」
何度か大きな犬に蹴りを加えた感想がそれだった。
フィルは銃が全然効かないので色々な方法で攻撃をしていたところで、フィルの判断した結果は『魔防御』が高いと言う事だ。
魔力に強く反応して身を守る魔防御は、魔力を持つ全ての生き物に備わっているが、魔力が高ければ強いと言うわけでなく、むしろ高いと低い。
魔力が高ければ魔力を使った攻撃が有利になるが、魔防御が低い者が多く、純戦士や純格闘家などの方が魔力に強い場合が多い。
そして、現在フィルと対峙している、でかい犬は魔力に強いだけで物理攻撃に弱い様で、さっきからフィルは銃で直接殴ったり、蹴ったりしている。
案の定フィルの攻撃はずいぶんと効いている様で、直接攻撃に慣れていないフィルの攻撃でもドンドン弱っていくのが分かっていた。
フィルの何度目かの銃で殴りを入れた時、急に犬が雄たけびを上げた。
かと思うと、急に竜巻が発生しフィルを空中に打ち上げると、フィルの左肩に噛み付いた。
「ぐあぁ!畜生!」
顔をしかめながら卑屈の声を上げると、ほぼ零距離から右の銃で犬の目を爆発を起こす弾で乱射する。
魔防御の高い精霊の犬でも、流石に至近距離からの銃爆乱射を食らうのはきついらしく、大きく声を上げて後ろに飛び退いた。
左肩を抑えながら、顔をしかめているが、フィルは左腕を持ち上げ。
両手の銃で非常に痛そうに頭を振っている大きな犬をロックオンすると、全精神を注ぎ込むようにして銃に魔力を送り込む。
「フルバースト・チェンジングガトリング!」
そう叫んだかと思うと、急に3つの銃身が高速で回転を初め、今度は高速で弾が犬目掛けて広範囲を撃ち抜く。
3種類の銃撃は普段より威力を増しており、広範囲を攻撃しているが、命中と言う命中がまるでなっていない、確実に雑魚殲滅用技だ。
しかし、それでも犬の体に当たったの時のダメージはさっきよりも高く、広範囲の魔力攻撃により犬は魔力に押されている。
大きな悲鳴のような声を上げて犬が倒れると、消滅し1つの緑の球体が地面に転がった。
銃撃は止んだものの高速で回転していた銃身は急に止まらずに、数回転した後止まってからフィルは銃を収めた。
そして、何故かさっきまで開いていた2階への扉が急に大きな音を立てて閉まり、
その扉を気にしながらフィルは何かの役に立つかもしれないと、転がった緑の球体を取りに行った。
その球体を手に取って少し眺めた後、上に上がる為に2階への扉の前に行き、押したり引いたり色々な方法で開け様と試してみた。
が、案の定開く事がなく、疲れてため息を付いて、扉に手を付いてふと手に違和感を感じて、出っ張りに気付いた。
出っ張りを観察していると、ちょうどさっき転がった球体が置けるようになっていた。サイズもピッタリだ。
「ほう、この玉をここに置くっと…お?」
そうするとゆっくりと静かな音を立てて扉が開かれ、2階への階段が現れた。
フィルは少し試したくなったのか、さっき置いた玉を取り外してみる。
しかし、何も起こらずに扉は開いたままだった。
まだ色々と用途があるのかもしれないとフィルはその玉を持って2階を目指し、2階の扉を開くと…。


「サリナ、大丈夫?」
「まさか貴方に心配されるとは思いませんでした………いえ、平気です。」
テンが本当に心配そうな視線をサリナに送っていたため、冗談を言ってから訂正した。
ショウ達は今3階に向っている途中で、4人になってしまっている。
「サリナも心配だけど下に居るツイーリも心配…」
そういって心配そうに、時々ある小さな窓の外を見る。
サリナの戦闘でお互い大分怪我をしてフラフラだったが、テンの治癒術で怪我や傷は全て治療したものの、消費した魔力を回復するのは難しい。
基本魔力は眠って回復するか、食事をして魔力を回復していくのだが、旅人や魔法使いが良く使う『ベリー』と言う果物がある。
ベリーにもいくつか種類があるのだが、どれも魔力回復を助ける事のできる物だ。
サリナもツイーリもレッドベリーを2つずつ食べたが、さっきまでの精神状態が問題になる。
「…テン…さん貴女ってとても優しいのですね…なんだか分かってきました……」
そうやってテンの顔を見て少し恥ずかしそうにして呟く、普段強気で何かと突っかかる事が多いため、優しいとは思っていなかった様だ。
「ショウには負けるよ…私は心配する事くらいしか出来ないけど、ショウは助けてくれるもん」
ショウの背中を見てテンも呟くように言うと、サリナが微笑み小さく、
「羨ましいです…」
と言うと、ショウが3階の扉を開き、リョウが一気に走り出して、次の扉の前に立っている、腕を組んでいる首のない精霊の鎧を問答無用で叩き飛ばすと、
「いけ」
と短く言うとショウ達は鎧が起き上がる前に扉の向こう側に消えていった。
「…お前の相手は俺だ…………」
刀を鞘からスラリと抜きながら鎧に向って笑って呟いた。


鎧を着て、再び戦闘準備を整える。
「これでよし!っと」
勢いよく立ち上がり、5人の姉妹のところに歩いていく、
「準備は出来た?」
リノアが腕を組みながらサイスに聞くと、サイスは頭を上下に振って笑顔になる。
段々遥か遠くの方に、旗を掲げた蒼い影が見えてくる。
「青の特攻っぽいね〜…」
フォミニンがその影を眺めながら呟く、少し余裕の表情を浮かべている。
魔力属性上では有利な属性で、勝てる自信が湧いてきたのだ。
「油断は禁物よ」
そんな顔の緩んだフォミニンを見て、ツイーリが少しきつめに渇を入れる。
イブはと言うと、塔の出っ張りの上に立ち、射程内に入った瞬間に打つ準備を整え終わったところで、少し気を楽にしている。
そして、ファナは握手に紛れてショウにもらった、小さな透明な黄色い石を、さっきからずっと両手で目を瞑り握っている。
「きっと……大丈夫」


「トリー、今日はちゃんと見つけてきたんだな」
といってクロナに近寄ってくる男が、笑顔でトリーに話しかける。
「この子ご主人様に勝つ気で居るんだよ〜」
といいながらその男に飛び移る。
男は長身で緑の髪の短髪で、知的で強そうなイケメンだった。
クロナはその男を前にして平然と立ち、お辞儀を1回すると、そのままステージの中央に歩いていった。
「うん…あの子、僕に惚れたか?」
「きっと一目惚れね」