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Zero field ~唄が楽園に響く刻~

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クロナは少しほっとしたのか小さく息を吐くと後ろの扉の向こう側から叫び声が聞こえた。
どうやらそろそろトーナメントは開始されようとしているらしい。
闘技場への扉が開かれると、一度出場選手が観客に顔を出すために、ステージに出なければならなかった。
開かれた扉から大きな歓声が聞こえてくる。準備室に居る全ての人物はその扉からステージに出ていった。


「1階に入って早々これか…相当めんどくさい仕掛けじゃないかシルフィー…」
ショウが呟く、ショウ達の目の前には人の2倍ほどある、大きな獣の姿をした精霊が4本の足で立っていた。
そうなるちょっと前、ショウとファナの会話
「私たちも一度も中には入った事はないの〜、だから案内とかも出来ないのよ〜」
「いや、それでもこの扉を開けてもらえるだけでも助かるんだ。
 案内はいいから向こうからやってくるやつ等をどうか俺たちが帰ってくるまで持ち堪えてくれ」
「私の好きになった男の子のお願いは絶対ね」
そういってショウと握手をするとファナは軽々と扉を開くと、ショウ達6人はその大きな扉をくぐって中に入った。
5人姉妹とサイスはその後姿を見送ると、遠くの方からやってくる青い影を見つめていた。
ショウ達が通路を進むと、広場に出て、そこの中央に浮いていた緑に光るクリスタルが砕け、人の倍ほどある犬の精霊が現れ、後ろの2階への扉を守る。
ショウ達はしぶしぶと武器を取ろうとした時、
「時間が無いんだ、お前らは先に行け、この塔の大きさから4階建てのようだからな、ここは俺に任せて先に進め」
とかっこよく銃を両手に構えるフィルが1歩前に出て言う。皆はちょっと考えてから頷いた。
「俺が気を引き付けてる間に扉に走っていけ」
そういって横に走ると精霊に向かって銃を乱射し始めた。
精霊はフィルの思惑通りに扉の前から動き気を引き付ける事が出来た。が、どうも全然攻撃が効いていないように見えた。
ショウ達は走って扉の向こうに消えると、フィルは笑った。
「全然効いてねーけど・・・大丈夫かねぇ?」


5人になったショウ達はそのまま2階に向かっていると、ドアを開き2階の広場に入る。
すると、今度は人間大の犬が次の扉の両側に鎮座しており、ショウ達が入ってくると同時に、ショウ達に跳び付いた。
ショウとリョウによりその突然の攻撃を阻止するも、相当硬いようでショウは蹴りを加えたと同時に反動で後ろに飛び、鞘で殴り飛ばしたリョウの手はジーンとしている。
「この精霊・・・シルフェンですね…」
とサリナが難しい顔をして、そう言って何かを思い出したように呟くと、イナがフフンと鼻で笑い。
また飛びついてきた1匹のシルフェンの尻尾を掴んで隅の方に投げ飛ばした。
「ゴーゴーだよ」
と言って次の扉を指差すとショウ達は一気に走っていって1階と同じように扉の向こうに消えていく。
「フィルにばっかり良いトコ見せさせたりはしないよ…でも、扉開いてるのにこうやって戦う理由ってあるのかな?」
と後ろからのシルフェンの攻撃を簡単にかわして色々考えていた。
「それにしても…速いし硬いのに……すごく軽かったけど…皆は居ないし……アレやっても問題はないよね〜…多分…」




.おまけ.


「おはようございます〜…。
 って独り言を言ってても空しいだけよね〜。」
ゴロゴロとベッドで目を覚ましたクロナは一人でブツブツと寝返るとこれでもかっ!と言うほど打っている。
クロナが取った宿は町で一番高級の宿で、ベッドも枕も何もかもがモコモコで気持ちよく、良く眠れるのだ。
それを存分に楽しむ気満々のクロナは完全に出る気を失っていた。
が、「ぐ〜」と腹の音が鳴ったのを聞いて、
「このまま寝続けて居たいけどぉ…………仕方ないわよね〜…………。
 城じゃないんだし………ご飯持ってきてくれないわよね〜……。
 高級宿には高級食堂がお決まりって言われて、お部屋に持ってきてくれないんじゃ、ボッタクリな気がする〜…。」
などと愚痴を零していても尚ベッドから出る気になっていないクロナは一度毛布を被ると、
「は!とう!えい!おりゃ!てぇい!うんにゃぁ!…………………。
 ……………………………………………………………………疲れた…起きれない…体が…持ち上がってくれない…ナンデェ?」
毛布の中でずっとボコボコと蹴ってみたり、毛布を殴ってみたり、色々な手を使って起き上がろうとしたが、ベッドの気持ちよさに体が起きてくれないようだ。
「ふおおおぉおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっぉおぉぉぉ……ぉ?!」
と情けない声を上げながらベッドから抜け出そうとモソモソ移動していると、頭から床に落ちた。
額を床に付けて腰下と両手がベッドの中にある状態で数秒間硬直していた。
スローペースで両手を床に付くと、体を持ち上げるために腕に力を入れる。
上半身が持ち上がったかと思うと、急に脱力して再び思い切り額を床にぶつける。
「ショウ…お姉ちゃんやる事やる前にこのベッド達にやられちゃいそう…。
 お姉ちゃん頑張ってるよぉ…でもね…でもね…でもねぇ〜…この子達強いのよぉ〜〜〜〜」
と涙を流しながらすごくだらしない姿で独り言を言っている。
またもノロノロと手でベッドから抜け出そうとして、1分位してやっと残りの腰下がベッドから抜け出た。
クロナは普段とってもだらしなく、城では部屋から出ないことが普通である。
床を虫の幼虫の様に移動してイスを使ってやっとまともに立った。
「ン〜…食堂行こうかしら…市場で果物を買って食べようかしら…喫茶店で甘い物でも食べようかしら…迷うわ〜…」
伸びをしてから片手を顎に当てて、今日の朝の食事をどうしようか考えている。
クロナは甘い物で始まって甘い物で終わる一日を、幾度となく繰り返してきている。
その為健康を損なわないようにと、クロナ専属の栄養士が存在し、クロナはほとんどその栄養士に従って食事をするのだが、旅の間その人物は居ない。
だから、いつもは自分で勝手に食事してしまおうとするのだが、時々手紙で食事のメニューを送りつけてくる。
「とってもご苦労様…このメニューほとんど私の嫌いな物で固まってるぅ〜…」
そう言って送られてきた手紙を涙目で見つめてそう呟くとしぶしぶ食堂に向かった。


食堂は朝なので朝食のために人が大勢座って笑っていた。
ここの料理は美味しいと評判な様で、この宿に泊まっていない人物もチラホラ見える。
「えっと、これ…きまぐれ・・ふぃっ・・しゅって言う奴と…んっとね…トマトサラダと、この…らぁ・・・めン…?って言うのお願いします」
「かしこまりました。シェフの気紛れフィッシュとトマトサラダ、絶妙海老ラーメンですね」
「え、えぇ…」
「少々お待ちくださ〜い」
としどろもどろに注文すると、手馴れたように注文を繰り返し、颯爽と踵を返し厨房に消えたかと思うと、すぐに出てきて次の客の対応をしている。
そんなきびきびと働く10代後半位のウェイトレスをボーっと眺めていた。
すると別のウェイトレスが料理を持ってテーブルに近づいてきた。
「トマトサラダです」
「あ、ありがとう」
クロナはフォークを恐る恐る取るとトマトを避けながら、苦い顔を浮かべて野菜をパクついている。