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Zero field ~唄が楽園に響く刻~

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イブは足を止める事により、さっきまで以上の矢を撃つ事ができるようになったのか、さっきより矢の数が増えていっている。
それでもテンは足を止める気がないばかりか、矢を撃つのをやめてイブに直進していく。
「あれ〜?面白い事するじゃな〜い、これは楽しめそうね」
とショウの隣に立って勝手にショウと腕を組んでいるファナが関心の声を上げた。
「テンはあれでもデステニアだし、何より、あそこで植えつけられた力もあるからな、隙や弱点を突くのが得意なんだよ」
「あら、真眼の持ち主?しかも、それってラック(欠如)じゃないの〜?」
「そうだな、真眼だ」
ショウは一瞬険しい顔をしたがファナはそれに気付いていなかった。
テンは、矢の間を見抜き器用にすり抜けてどんどんイブとの距離を縮める。
段々焦りが表に出てきていたイブは、一瞬撃つのをやめて深呼吸を1回すると集中力を高めて1発だけ打ち出した。
「もうセカンドアーツに入ったわね、焦りが見えるのが心配ね」
ツイーリが口元を手で隠して少し難しい表情を浮かべていた。
「魔力の流れが変わっている、戦闘方法自体の違いがあるのか?」
神殿の壁にもたれているリョウがツイーリに小さな疑問をぶつけていた。
「イブの場合は、ファーストアーツに比べて、威力を高める事に特化するの、だから、速度と威力を上げる事ができるわ、確実に仕留める術ね」
「かわせない速度で撃つってことか」
納得の言ったような表情を浮かべて、勝負の行く末を見守る事にしたリョウは、壁から身を起こした。
イブの放った矢をテンは辛うじてかわし、一気に距離を詰め、弓を分離して双剣で一気に斬り付けようとした。
すると、イブが後ろに跳ぼうとして足を滑らせて尻餅をついた。
その拍子にイブの持っていた弓がテンの首にトンっと当たった…。
「…へ?」
「え?え?え?」
テンは弓から伝わる熱を感じて、微妙な表情でクエスチョンマークを頭の上に飛ばしている。
それに対して、イブは、少し驚いたような顔でキョロキョロと辺りを見ていた。
この時点で勝負は有ったのである。
皆とんでもないこの勝負の幕引きに唖然としている。
そんな沈黙をショウが、勝負の終わりを告げるために叫ぶ。
「し、勝者は…チェックメイトにより、イブ・リアーテイント!」
「うっそおぉぉおぉ……」
テンは一気に脱力してその場にへたり込んだ。
今回の勝負でお互いに一切怪我をしていない、ある意味すごい勝負となった。

「第2戦、番人四女のフォミニン・リアーテイント、ガーディエッツ軍・見習い兵士のサイス・リストレンテ」
引き続きショウが審判である、もう既に剣を投げる気満々である。
「見習い〜?勝負にならないんじゃない?もしかして、軍学校の武術で主席とか?」
退屈そうな声でフォミニンが挑発気味に言う。
「いや〜、軍学校居た時は下から3番目くらいでした〜」
照れながら笑って頭を掻きながらサイスがそんな事を宣言する。と、皆はずっこけてしまった。
その中、初めに口を開いたのは、サイスの主であるお姫様が、こめかみの所をピクピクさせて笑顔で、
「貴方・・・それで出たからには勝ちなさいよ?もし負けたら覚悟してもらいますよ?」
サリナの後ろから、どす黒いオーラを感じながら、サイスは壊れたように何度も頭を上下させた。相当怖いのであろう。
ショウは頭痛のする頭を抑えながら、剣を上に放り投げた。そして、その瞬間にショウは両側からほぼ同時に腕を組まれた。
もう何回転しているのか分からないほどの回転速度で、剣はどんどん落ちてきて、やがて、地面に突き刺さる。
勝負の開始の合図がなった。が、両者共に構えたままその場を動こうとしない。
長い沈黙、その沈黙を最初に破ったのは、サイスだった。
「ガーディエッツ槍術!いくぞ!」
気合を入れるように叫ぶと、サイスは一気にフォミニンの方に走り出した。
デリスは盾を前に構えると、1歩引いてから勢いよく盾を前に突き出した。
それと同時にフォミニンの持っている盾の、一回りも二回りも大きい薄黄緑色の魔力の盾が直線状に放たれた。
サイスは、左に持っていた盾を、前の方に投げると槍の柄で突き出した。
魔力の盾と突き出された盾が衝突し、サイスはその状態で持ちこたが、魔力の盾が消えた時には、サイスは大分後ろの方に押し戻されていた。
「うひゃ〜、すっご〜い、あたしちょっと惚れちゃいそう」
「惚れちゃって下さい、貴女なら大歓迎ですよ」
フォミニンが体をややくねらせながら、冗談を言うと、サイスもそれに乗って冗談で返した。
そのやり取りを見てふと思う事があったのか、フィルが
「フォミニンのあれって冗談か?」
「冗談であんなセリフ吐く様な妹じゃないけど・・・」
と質問に答えるリノアの口の端は引きつっている。
単純にもほどがあると言いたいのであろう。
それを察したフィルは「そうか〜」と言って向き直った。
サイスはもう一度走り出す、フォミニンはもう一度魔力の盾を放つ、それでまた押し戻される。
この動作を3回繰り返して、そこでフォミニンが溜まらずに声を上げてしまった。
「きゃ〜〜〜もう、なんか良くわかんないけど惚れちゃったよー!
 もう大好き!もう手加減しないよ!あたしが勝ったら一生あたしとイチャイチャしよ〜よ!!
 それで、あなたが勝ったら、貴方にあたしの全てをあ・げ・ちゃ・う」
最後のセリフの時、胸を強調するためか腕を組んでクイッと持ち上げる。
その揺れる胸を見たサイスは、一瞬にして妄想の世界に飛んでいってしまった。
・・・○○◎
『うふふ、貴方に全てをあげるわ』
『はは、僕が君の全てを僕で埋め尽くしてあげるよ』
◎○○・・・
「その話乗った!」
サイスは大きくガッツポーズをするとフォミニンにそう叫んだ。
「何?この勝負、勝とうが負けようが二人の望むように進むんじゃね?」
と言う呆れたショウの言葉、
「乙女と変態って感じだよね」
ショウの隣に来たイナがそんな事を呟き、ショウは相槌を打った。
「男ってやっぱりでかいのじゃないと嫌なのかしら、邪魔だから掴めるだけあればいいのよ、手で掴めればいいのよ」
いきなりショウの前に出てきたテンが眉間にしわを寄せて言う。
それに続くように、握りこぶしを作っているサリナと余裕の表情のファナがテンの横に出てくる。
「掴めなくったっていいじゃないですか、女は胸じゃないんです。
 女は気品や礼儀、そう言った中身です!体じゃありません!」
「負け惜しみは良くないよ〜、男は皆、胸で落ちるのよ〜」
「何よ!でかいからって自慢しないでよ!胸なんて手で掴めればいいの!」
「女は中身です!体じゃないんです!」
「大きくって何ぼよ〜」
そのまま、またショウの後ろの方に行って言い争いだした。
実はさっきも、ショウの両腕をテンとファナにホールドされた時、サリナがやってきて外そうとして結局言い争いになり、ショウの後ろの方であーだこーだ言っている。
「苦労してるね…」
「あぁ、疲れた…」
ショウとイナは大きくため息を吐いた。
「それじゃ、仕切りなおし」
「行きますよ!」
フォミニンの声に同意してサイスが深呼吸して走り出した。
サイスの勢いよく突き出された今回初めての突きは、フォミニンの跳躍によってかわされた。