Zero field ~唄が楽園に響く刻~
9唱、悲劇の鳥の歌声
「…不思議ですね…」
と、糸を回りに漂わせる少女が、傷だらけの姿で言う。
後ろには、数多の血が地面を濡らし、赤く染める。
さっきまでこの空間には耳が痛くなるほどの、破裂する音に似た叫び声がこだましていた。
なぜこんなに地面が赤に濡れる事になったのか、それは数十分前。
「お嬢様、今日もまたお美しいぃ。」
白いひげを生やした、老人が、淡い水色の髪をした少女に、拝むように言った。
「やめてください、私がそんな風にされるのが苦手なのは知っているでしょ?」
それを聞いた老人は、頭を深く下げて、謝り、少女は少し困った顔をする。
少女はちょっと口をへの字にした後、老人の肩に手を置き、微笑みかけた。
老人はすごくありがたそうに頭を下げ、少女は困惑しながらも、その場をあとにした。そして、王間に足を踏み入れた。
少女がいる場所は城、大きな城である。
少女は、膝を付き王に頭を下げた、
「お父様、お呼びですか?」
「顔を上げろ、お前に頼みたい事がある。」
王が、少女に威厳のある声で言う。
少女は、冷や汗を掻いていた、少女は王の声にいつものような優しさがないことに気付いていた。
「今、この国に、行動派Generetorの4人が向かっていると言う話だ。
その4人と合流し、この神玉を神殿に収めてきてくれ」
「で、ですが!」
少女はすごい汗を掻いていた。
それはとても重大で、合流でいるかも分からない4人に、神玉を持って会い。
その神玉を、とても危険なガーディアンがいると言われている神殿に収めてくるなどと言う、危険でハイリスクな命を、まだ18も行かない少女に与えたのである。
少女は王の目を見た、王の眼に映っているのは悲しみと諦め。そして、何かを悟っていると言うものだ。
少女は少し、めまいがしたが、こらえて静かに、「分かりました。お父様」とだけ言った。
きっとここも長くないのだろう…。
「船旅と言うのもなかなか悪くないな」
などと黒髪の少年は独り言をしている。
黒髪の少年は、甲板で水平線や海鳥などを眺めていた。
少年は、常に武器を右手に持っていた。そして、気が済んだのか、船内に戻ると、訓練場に入っていった。
訓練場には、ちょうど、トーナメント式で、手合わせをやろうと話し合いが上がっている時であった。
「面白そうだ、ルールを教えてくれ、俺も混ざる。」
「おう!いいぜ!ちょうど1人ほしかったところだ!
ルールは簡単だ、どっちがギブアップするか場外に出るまで試合をやって、勝った方が次の試合に上がれる。」
と、筋肉質の自身ありげな30台の男が、熱く語りだす。そして、さっきまでその男と話し合いをしていた帽子を被った茶髪の20代の男が、注意を言い出した。
「実践武器は使用禁止、使っていいのは、ここにある木造武器と、刃物以外だ。」
「つまり、この俺のカタナは抜かなければ使っていいのか?」
と少年が右手に持った鞘を見せる。
「あぁ、許可しよう、名前は?」
と、トーナメント表にペンを向けて聞き、男は少年の答えた名前を記入した。
「これより、第3、1回戦開始する!」
と、帽子の茶髪男が叫ぶ、そして、二人が準備がいい事を確認した後、
「リョウ!アガートルーア!試合・・・・始め!」
と同時に、アガートルーアと呼ばれたさっきの筋肉質男がリョウに向かって走り出す。
アガーの武器はどうやら拳のようだ、自身ありげな笑顔でリョウの目の前にすごい速さでたどり着く、と同時に右のアッパーが飛ぶ、
「この勝負もらったぁ!」
が、それは空を殴ることとなり、対してのリョウは、木造の剣を借り、右手に鞘、左手に木造の剣、という具合だった。そして、アガーが飛んできても、ただ腰を低くして、右手をやや後ろにし、左腕をたらした体勢だった。
アッパーが飛んできた瞬間、リョウは一気にしゃがみ、アガーの死角を捉えていた。
勝負は一瞬にしてかたがついた。
リョウの圧勝、鞘で腹部を思いっきり殴っただけだが、アガーにはそれで十分だった。
どうやら筋肉は伊達だったようだ。
みんなは目が点になっていたが、帽子の男は笑って、
「勝者!リョウ!2回戦進出!」と叫んだ。
2回戦も、準決勝もどっちもリョウは難なく無傷で終わった。
どっちもカウンターだけで終わった。
相手は、あの手この手で、何度かカウンターを受けないようにしたが、リョウはどんな状況でも構えを変え、すべての攻撃をかわし、カウンターで気絶させていた。
そして、決勝戦、リョウの相手は、帽子の男、
「面白い、今度はどうやって戦う?」
帽子の男は、笑いながらリョウに問いかけた、
帽子の男の戦い方は、遠距離攻撃で、普段の武器は、この世にはとても珍しい「銃」と言う武器を使って戦うことのできる、ガンナーであった。
リョウは、口だけで笑い、「それじゃぁ始めよう」と呟き。
代わりの審判が叫ぶ、
「リョウ!フィルディア!決勝戦!・・・・始めぇ!」
と同時に、フィルディアは、両手に持った木造ナイフを前方に向けて、魔力を撃ち始めた。
(ふん、普段魔力を打ち出す銃を使っているが、他の武器を媒体にしても打ち出すことができるのか・・・)
と暢気にリョウは、すごい勢いで飛んでくる魔力の玉を、右手の鞘を前に掲げ、振り払った。
フィルディアは少し驚いた風にして、また笑顔を作った。
「ゼトラスアークにあった、秘境の剣士の流儀か。
道理で、自分からはなかなか攻めないわけだ。」
「エイスティーナ流儀だ、今や忘れ去られて俺しか使い手はいない。」
と、リョウが、落ち着いた声で、答えた。
エイスティーナ流儀は鞘を取り入れた両手使用の流儀である。
主にカウンターで戦い、攻める時は鞘を破壊に使う、とても扱いづらい流儀だ。
お互い珍しいもの同士の戦いだった。
その戦いは、結局、実戦武器を使えなかったフィルディアの敗北に終わった。
本物の銃での戦いなら、リョウは勝てていたかは不明である。
フィルディアが持っている銃は、中でも特殊で、3種類の銃口があった。
1つは、魔力の玉を的に当てるか、一定距離進ませるかすると爆発させる事ができる。
1つは、魔力の玉を回転させて、速度と飛距離を伸ばすことができる。
1つは、魔力の玉を同時に3発放つ事ができる。
そんな、トリガー(銃全体の名称)であった。
フィルディアは2つ持っていて、両手に持って、使いこなしていた。
さっきの試合が終わり、リョウとフィルディアは少し、打ち解けたみたいであった。
残りの船旅は二人で食事をしたり、暇をつぶしたりしていた。
神の終、23、雷
船がいきなり速度を落とし始めたのが分かり、リョウは甲板へと飛び出た。
「ショウ!」
と言う、女2人の声が遠くからかすかに聞こえた。
とほぼ同時に、1人の少年がリョウの目の前に、降ってきた。
少年はリョウにきづいたのか、よろよろと立ち上がり、後ろを振り向かずに、
「さて、ここからが本番だな」
と、リョウに語りかけていた。
リョウは、さっきの女の声にイナがいたことに気付いていた。そして、それは十分に少年と手を組む理由になっていた。
少し笑みを作り、嫌味で少年に、
「ふん、こんな奴もろくに倒せないのか、お前は、まぁいいぞ、行くぞ」
作品名:Zero field ~唄が楽園に響く刻~ 作家名:異海 豹