Zero field ~唄が楽園に響く刻~
全く現状がつかめない、と言う顔でバルトがぽかーんとしている。
イナは、そっか〜と呟きながら、フェニックスと一緒にがつがつと食事した。
神の終、14、水、船が出発して4日目
ショウは、船の頂上に立っていた。そして、ただ水平線を見ている。
水平線はわざわざ高くから見る価値もなかったのだが、ショウは暇だからと、色々なところから色々な方向の水平線を眺めた。
ショウはだいたいそれで1日を潰していた。
テンは基本は部屋で、椅子に座ったり、ベッドに座ったり横になったり、何をするもなく、ただ暇を紛らわすだけだった。
バルトは、食事の時以外は寝ている、理由は極力揺られてると言う感覚を味わいたくないのだそうだ。
感じてしまうと酔ってしまうからだ。
食事の時など、他の事に集中できる時は、船である事を忘れて大丈夫なのだと自慢気に話していたのをショウ達は聞いていた。
イナはフェニックスとありとあらゆる遊びをした。
神の終、15、緑、船が出発して5日目
その日は珍しく魔物の群れが現れたが、それはそんなに時間がかからなかった。
昨日と同じようにショウが船の頂上で水平線を見ていると後ろで感じた違和感に反応して、テンの部屋に降りたって武器をとると、大きな魔物が数匹で船を囲んだが、イナの魔法とテンの弓矢、ショウの特攻でかたが付いた。
バルトはその時ベッドで顔を青白くして、横たわっていた。
その後、船長からお礼の金が手渡されたが、その金はすぐにイナの食料へと転換した。
「少しくらい遠慮を知れ」
ショウが、呆れたようにため息交じりに言う。
無論、イナはそれを聞いていない、やはり食べることに集中していた。
「ぁ〜、でもさっきもらったお金だけでも、まだまだ余裕あるよ〜?」
とテンが、さっきもらったお金の残金を見た。
残金は、イナが食べた分をさらに4人分であと1週間食べて生きていける金額だ。
普通に過ごせば2か月を生きていける。
ショウは、納得いかないようにテンを睨む。
「そう言う事じゃなく、もう少し、もらった金の使い方どうにかできねーか?ってことだ」
「別に元から持ってたお金の倍くらいもらっただけじゃない…まだまだ生きていけるし、別にいいんじゃなぁい?」
とテンが小首を傾げて言う、イナは依然として食料を自分の体内に取り込むことだけを考えている。
フェニックスも食べているが、結構長い間食べ続けても、フェニックスの食す量は子供のお小遣いで払える範囲でしかないので、どうでもよいが、イナの1日の捕食量が半端ないとショウは考えていた。
「金銭的に余裕でも・・・なぁ?」
ため息をして額を机にくっつけて、イナの食事が終わるまで仮眠していた。
神の終、16、雷、船が出発して6日目
この時は、特別な事はなく。
ただショウ達は、船での生活があと2日しかない事を名残惜しく思っていた、バルトを除いて。
作品名:Zero field ~唄が楽園に響く刻~ 作家名:異海 豹