影響された世界にて
ルリジたちがしばらく走ると、黒焦げになった木々が現れ、その木々の中で、ウォーや他の村人たちが立ち尽くしていた。
ウォーたちの向こうに、あの物体はあった……。
あの物体は、楕円状や直線状になった大きくて堅そうな物が1つにくっついたものだった。ところどころに焦げや傷があり、物体全体から熱気が出ていた。
その物体は、異次元空間を航行できる艦船だった……。側面には、『CROSS』と、かろうじて読める状態で記されていた……。
もちろん、ルリジたちに、この物体が異次元の艦船であることや記されている文字などはわからなかった。そもそもこの世界ではまだ、「文字」すら発明されていなかった……。
ルリジは呆然と立ち尽くしているウォーの元に近寄る。
「何だこれ……」
「……俺に聞くな」
当然の返事をするウォー。
ピスは体を震わせながら謎の物体を見ていた。可愛い目を大きく見開き、まるで我を忘れている感じだ……。
「ピス! どうした?」
ルリジは、彼女に呼びかけた。だが、彼女に変化は無い……。そこで彼は、彼女の肩を揺らしながら名前を読んだ。
「あっ、ルリジ」
そこで彼女は我にかえったようだ。
「どうしたんだよ、震えていたぞ」
「え? 私、震えてた?」
「……いや、もういいよ」
そう言うとルリジは、ピスの肩から手を離し、再び物体を眺める。
「……ねぇ、そろそろ帰らない?」
ピスはみんなにそう言った。青い太陽が森の向こうに消え、空はどんどん暗くなっていっていた。
「馬鹿! こんなに早く帰れるかよ!」
ウォーが物体を見ながら怒鳴った。
ピー!
突然、そんな音が物体から聞こえてきた。言うまでもなく、その場にいたルリジたちは驚き、即座に手に持っているこん棒を物体のほうに構える。
すると、物体の側面にあったドアが金属がきしむ音を立てながら外に開いた。そして、その中から、人の生首のような物が、浮遊状態で出てきた。それは、ルリジたちのほうへ一直線にやってきた。ルリジたちがどれほどビックリしたかは説明のしようが無い……。