影響された世界にて
第2章 謎の訪問者
ルリジたち8人の一行は、目的である謎の物体に向かって春(気候の変化は我々の世界と変わらなかった。)の花々が咲き乱れる野原をどんどん進んでいった。すでに元からあるけもの道からはそれていた。
「きれいなお花〜!」
ピスが虹色に輝く花をつみ始めた。
「オイ! 花をつみに来たんじゃないぞ!」
ウォーが振りかえってピスに怒鳴った。ピスはしゅんとなり、つんだ分だけ花を持ち、うつむいたまま再び歩き始めた。
「帰りにつんで帰ろうな」
しゅんとなっているピスに、ルリジはそっと言った。その言葉にピスは元気を取り戻したようで、コクリとうなずいた。
しばらく野原を進んでいくと、小高い丘があった。あの謎の物体が飛んでいった方向にしたがい、一行は登り始めた。
その小高い丘の頂上で、ウォーは突然立ち止まった。そのため、ルリジはウォーにぶつかりかけた。
「ウォー、どうした?」
ウォーは黙って何かを眺めている。一行も、その方向を眺めてみた。
丘のふもとから広がる森の真ん中に、昨夜、村の頭上を飛び越えて行ったあの物体があった。あの物体の周りの木々は黒く燃えて無くなっており、ところどころで黒煙が上がっていた。
「森の中は危険だ。一気に駆け抜けるぞ」
ウォーはルリジたちにそう言うと、丘の上から森に向かって走り出した。それにルリジたちは続いた。ピスは走るのがつらそうだったが最後尾でなんとかついてこれていた。
森の中は、まだ昼間といえとも薄暗かった。ルリジたちの村の近くにある森よりも、この森は深いものだった。鳥や想像したくない獣の鳴き声が聞こえてくる。たまたま獣道があったのでそれを利用した。
その森の獣道を、ルリジたちはウォーを先頭に休むことなく走り続けた。みんな裸足なので、地面に転がる小石などが痛そうだった。
だが、森の獣に喰われるよりはマシと思っているのか、構わず走り続けた。土埃が舞う。
「キャッ!」
そのとき、最後尾で息苦しそうに走っていたピスが、地面から出ている木の根っこで転ぶというよくある展開が起きた。ウォーや他の村人は一瞬立ち止まったが、得体の知れない獣の鳴き声が耳に入ってくると、再び走り出して行ってしまった。しかし、ルリジは獣の鳴き声を無視して、転んでしまったピスの元に心配そうに駆け寄った。ピスは半泣き状態になっており、右ひざに軽いすり傷ができていた。
「これぐらいなら大丈夫だよ。さっ、行こう」
「……うん」
ルリジはそう励ますと、ピスを立ち上がらせ、いっしょにゆっくりと走り出した。