影響された世界にて
翌日、村の広場に村中の人々が集まっていた。少し大きめの岩の上には長老が正座していた。人々は長老を囲む形で集まっていた。人々と長老は、一言も喋らずにずっと黙りこんでいたが、
「長老! お迎えに行くべきでは?」
黒髪の若者が、長老に言った。
「そうですよ長老。水がめを満たしていただいたのですから」
「他にも何か贈り物があるかもしれないしな」
他の人々も口々に言いだした。
しばらく長老は黙ったままだったが、
「我々を油断させるために雨を降らせたのかもしれんし、迎えに行くなんて危険じゃ!!! 許すことはできん!!!」
長老は人々に大声で言った。
人々は、長老のその言葉にびっくりしているようだった。
「何を言い出すんだ、長老! 被害妄想かよ!?」
「一目見ただけで私はわかった! あれは、遠い地方の言葉でいう『神』というものだと!」
「そうだ!!! 我々の神様なのだ!!!」
人々はヒステリックに喚き出した。そんな人々に長老は怒ったようで、
「いいかげんにするんじゃ!!!」
長老は大声を張り上げた。だが、
「長老!!! 私はお迎えに行きます!!!」
先ほど最初に口を開いた少年が、長老に負けないほどの大声で言った。その少年は、まだ11か12歳ぐらいのようだが、彼の赤い目は決意で満ちていた。
「……ルリジよ。おまえも言うか……」
「お願いです、長老! ぼくに行かせてもらえませんか? もし、味方では無かった場合、私はすぐにその場で死にます」
そう言うと、ルリジという少年は腰からナイフのような刃物を取り出し、自らの首に押し当てた。彼の目には、あいからわず強い決意がこめられていた。彼の目と行為を見た長老は、深く考えた後に口をゆっくりと開いた。
「わかった迎えに行くことを認めよう……」
長老のその言葉に、人々の間でどよめきが起こり、
「ありがとうございます。長老」
ルリジは静かに長老に礼を述べた。
「ただし、1人で行くことは認めん」
長老はきっぱりそう言った。ルリジは、仲間を探そうと、人々を見回す。
「ルリジ! 俺はいっしょに行くぜ!」
ウォーが人々の中からルリジの元へ叫びながら出てきた。
「……ああ、いいよ」
行く気満々のウォーに、ルリジは渋々OKした……。