影響された世界にて
「なんだなんだ?」
「水不足以外に困っていることって、なんかあったか?」
「何か貰えるのかな?」
ロボの前に集まった人々。水の件で浮足立っているのか、落ち着きが無い。
『みなさん。ワタシから提案したいことがあります!』
幸い、ロボが話し始めた途端、静かになった。ルリジたちは、ロボが話すことを、一言でも漏らすまいと集中している。
『もっと豊かに……暮らしたくはありませんか? ……ワタシは、みなさんを……豊かにすることが……できます』
ロボは、そう言った……。
軍事技術に対するストッパーを失っているロボは、戦争をすることによって、ルリジたちを豊かにするつもりであった……。
ただし、失ったのは軍事技術に対するストッパーだけで、中世ヨーロッパレベルまでという制限は生きていた。だがそれでも、古代ローマ時代レベルしかないこの世界を支配するには十分だ……。
「うぉーーー!!!」
「導いてください!!!」
人々は、歓声をあげた……。踊りだす者もいる。
今まで水不足で苦しんでいた彼らには、豊かさへ渇望が大きかったのだ。ルリジやウォーだけでなく、長老やあの家族も喜んでいる……。
ロボの提案に喜んでいないのは、ピスだけだった……。彼女は、目を大きく見開いて、静かに怒っていた……。
しかし、歓喜に酔いしれるルリジたちを見て、とうとう堪忍袋の緒が切れたらしく、
「そんなこと、許さないわよ!!!」
ロボに突進していった……。両手を振り上げている。
「何の真似だ!?」
間一髪のところで、ウォーが彼女の体を掴んだ。
「放して放して!!!」
喚きながら暴れるピス。しかし、ウォーがしっかりと掴んでおり、それ以上は動けない。
「おまえ、おかしいぞ!」
ウォーはそう言うと、暴れる彼女を引きずっていく。ルリジたちは、仕方がないなという表情で、彼女を見送った……。
村はずれの野原まできた。ピスは、諦めた様子で、騒がしい村のほうを見ている。「終わってしまった」という絶望感が、顔に浮かんでいた……。
「まったく! しばらくここで、頭を冷やしていろ!」
ウォーはそう言うと、ピスを野原に放り出す。
野原に転がる彼女。野原に咲く花が、彼女に香りを届けたが、今の彼女にはどうでもよかった。