影響された世界にて
「やれやれ、次にすることは?」
『あとは、その火薬に火をつけるだけです。あっ、あのお嬢さんが持ってきてくれたみたいですよ』
「お嬢さん?」
なんとなく嫌な予感がしたルリジとウォーは、大急ぎで穴から上がる……。
「ピス!!! 危ないから、それをぼくに渡して!」
穴へ近づいてくるピスに、両手を差し出すルリジ。
「いいえ! 私が処理するわ!」
彼女は、強い口調で言った……。何かを決心しているようだ、
「……処理?」
「何を言っているんだ? いいから俺たちに渡せ!」
ウォーは、彼女から松明を奪い取ろうとする。
『問題発生ですか?』
ロボが、穴から顔を出す。
「えい!!!」
ピスが、松明を穴へ向かって投げる。ただそれは、穴の中へではなく、ロボを狙っているかのようだった……。
『おっと!』
ギリギリのところで、横に避けるロボ。空中を舞う松明は、そのまま穴の中へ落ちていく。
そして、底に置かれた火薬入りの布の上に、きれいな着地を決めた……。
ドカーーーン!!!
引火した火薬が、盛大な爆発を起こす。ありきたりな爆発音だったが、初めて耳にするルリジたちは、腰を抜かしていた……。
岩の破片が、穴から勢いよく飛び出す。
『ギギ!!!』
そのうちの大きな破片が、ロボに直撃してしまった……。よろめくロボ。
空に舞い上げられた破片は、雨のように降り注いだ。幸いなことに、小さな破片が多く、ルリジたちの被害は軽く済んだ。
ただ、爆発による激しい振動のせいで、あの家族の家が、積み木の家のように倒壊した……。虚しい砂埃が、家族を覆った。
「ああ!」
嗚咽を漏らす家主の男……。
破片の雨や振動が収まると同時に、ロボが地面に墜落した……。
『ピピピ……ピピ……』
変な電子音を立てている……。頭頂部付近に、小さなへこみができてしまっていた。
『軍事……技術に……関する制限は……解除されました』
どうやら、軍事技術に関しての制限が、今の直撃が原因で解除されてしまったらしい……。
「だ、大丈夫か!?」
ルリジが耳鳴りに苦しみながら、地面で転がるロボに駆け寄る。ウォーや人々も、駆け寄ってきた。
ただ、ピスだけは、遠巻きにじっと見ているだけだ。それは、反省しているわけではなく、事の成り行きを見計らっているだけのように見えた……。