影響された世界にて
翌朝、村人たちは、ある民家の近くで穴を掘っていた。ロボが指定した、新しい井戸ができる場所だ。
力のある若い男たちが、穴をどんどん深くしていく。使っているのは、金属製ではなく石製のスコップだ。穴の周りにいる女たちは、掘られた土を、離れた場所へ運んでいく。
「よいしょ! よいしょ!」
「そろそろ、違う置き場所を確保したほうがいいかしらね?」
穴掘りをする人々を、1組の家族が見ている。子供連れの彼らは、悲しそうな表情を虚しく浮かべていた……。
「本当にうまくいくのかな?」
「もし無理だったら、ぶっ壊してやるぞ」
少し離れた場所では、ルリジとウォーが、別の作業に勤しんでいた。彼らは、何発もの銃弾を分解していた。それらは、ロボが持ってきたマガジンに入っていたものだ。
2人は、中から取り出した粉末状の火薬を、ボロ布の上に集めている。すでに、こんもりとした小山ができていた。
ロボの考えとは、集めた火薬を使って、岩を爆破するというものだった。先ほどの査定の際に、この辺りの地形をしっかり調べており、これで対処が可能らしい。
ただし、その爆破の弊害で、あの家族の家も壊れてしまう……。もちろん、彼らは反対した。しかし、村人たちに、強引に押し切られてしまったのだ……。
掘り進めていると、ある男のスコップが、音を立てて止まった。地中の岩に当たったようだ。とても石製のスコップでは、これ以上掘れない。
「ここはもう掘れない」
「あっ、こっちもそうみたいだ」
しばらくすると、全員がこれ以上掘れなくなった。露出した岩は、かなり大きそうだ。
どうやら、火薬の出番がきたらしい。
『こぼさないよう、気をつけて運んでください。他の方は、松明の用意をお願いします』
ルリジとウォーは、布にくるまれた火薬を、慎重に穴の中へ下ろしていく。何人かの村人は、火をおこし、火薬を爆発させるための松明を用意する。
「ここでいいか?」
『もう少しそちらへ』
火薬入りの布を置く場所を、ロボが指示する。岩の弱い部分を把握しているようだ。
「よしできたぞ」
おこした火で、松明を燃やす村人。
「私が持っていくわ」
「そうか。じゃあ頼んだぞ」
松明を持ったのは、ピスだった……。彼女は回れ右をすると、穴のほうへ歩いていく。