影響された世界にて
「ウワァァァァァ!!!」
ルリジは叫びながら、獣に突進した。しかし、獣の2メートル近くまで接近したとき、獣が右前の手足を大きく横に振り回す。
獣の赤い爪が、ルリジへ向かう。間一髪のところで彼には当たらず、前に構えていた自動小銃の台尻部分を引っ掻いた。木でできた台尻に、獣の爪痕がくっきりと残る……。
今、気づいたが、獣の少し後ろに離れたところに、ルリジといっしょについてきていた村人の死体が転がっていた……。骨ばかりになっているところを見ると、獣に襲われてエサになったようだった……。
ルリジはさっと一歩後ろに退いた。そして、台尻にできた爪痕を見て、倒れたままのピスの姿を見た。獣は地面に降り立ち、ルリジに飛びかかろうと息巻いており、さっさとケリを詰けようとしているようだった……。もちろん、獣自らの勝利へのである。
ルリジは覚悟を決めた様子で、獣を台尻に向けて身構えた。
『自動小銃の使い方を間違っていますよ!!!』
突然、ルリジの後ろから、場違いな口調の声がした。その声は、特務艦を案内してくれたロボだった。ウォーが隠れている茂みの近くにおり、ルリジは一瞬だけ振り向いてそれを確認した。獣はロボを見て、ピスを観察していたときのような怪訝そうな表情をしていた。
『今あなたが持っているのは、自動小銃『AK47』です!!! とても丈夫で使いやすい武器ですよ!!!』
「おい! どう使えばいいんだよ!?」
ルリジが尋ねた。ただ、視線は獣に向いたままだ。
『これ以上のことは、お教えできません』
「こんなときに何を言い出すんだよ!」
どうやら、軍事技術に関するストッパーが作動しているらしい……。
獣は気を取り戻すと、ルリジに襲いかかる。彼は退いた拍子に、そのまま仰向けに転んでしまう。
ところが偶然にも、自動小銃のトリガーに、指が強くかかる……。
タタタタタタタタタタ!!!!!!
銃声とともに、自動小銃からライフル弾が連射されていく……。そのうちの何発かの弾は、獣に命中した。
堅くて鋭そうな革を貫通し、体内を荒らし回っているらしく、獣はうめき声を上げながら、その場で変なダンスを踊る。やがて、獣は砂ぼこりを立てて、その場に倒れる。
倒れた獣の周りに、青い血溜りができていった……。