影響された世界にて
ルリジたちが一番最初に入った部屋は『エアロック室』だった。何も無い部屋だが、壁や天井や床のあちこちにヒビができたりしていて壊れている……。
説明に時間がかかると思ったのか、ロボはこの部屋の説明はせずに、部屋の外の通路へと誘導した。 ルリジたちは興味津々であちこちを眺めながら、ロボについていった。
通路も壊れていた。壁にできた穴の中で、切れたコードが、火花をバシバシと散らしている。
『故障が目立っておりまして、申しわけございません。修理チームとの連絡ができないので、どうしようもできないのです』
ロボは、残念そうに言った。
そして、ロボは取っ手の無い両開きの円状にカーブしているドアの前で止まった。すると、そのドアは金属音を立てながら、ぎこちなく開いた。ドアの向こうは10人ほどが入れる小部屋だった。
『こちらは『ターボリフト』でエレベーターのような物です』
「たーぼりふと? えれべーたー?」
ルリジは頭の上に?マークを浮かべてロボに聞いた。
『この広い艦内を迅速に移動する装置です。昔でいう馬ですね』
「馬?」
『……まだそこまでも進化していませんか……』
ロボは軽く笑った。だが、ルリジの後ろにいるピスの睨むような視線に気づくと、すぐに元の真剣な顔に戻った。
全員がターボリフトに乗りこむと、ドアは音を立てながら閉まった。
『コンピューター、ブリッジまで』
ロボはそうつぶやいた。ルリジとウォーは次に何が起こるのかドキドキしていた。 しかし、10秒たっても何も起こらなかった。
『コンピューター! ブリッジまで行け!』
ロボは声を少し荒上げて言った。
すると、ターボリフトは鈍い音を不気味に立てながら動きだした。
ターボリフトが動きだしたことにルリジとウォーは驚き、壁にへばりついた。ピスは冷めた表情のまま後ろで突っ立っていた。
1分ほどして、ターボリフトはひときわ大きな鈍い音を立てて止まった。ドアがきしみながら開くと、広い部屋があった。部屋の壁一つが分厚そうな窓ガラスになっており、窓の外が見えた。ただ、その窓ガラスには大きなヒビが入っていた。そして、部屋のあちこちで火花が上がっていた。そして、誰もいなかった……。
『こちらがこの艦の『ブリッジ』となります。どうぞ!』
ルリジたちはターボリフトを出て、ブリッジの真ん中に立った。ルリジとウォーは興味津々であちこちをまんべんなく眺めた。ピスはすぐ近くにあったこの部屋で一番大きいイスを見ていた。そのイスには少し血がほとんど乾いた状態でついており、ピスはその血にそっと触れた。
『勝手に触らないでください!』
ロボはピスに少し大きな声で注意した。手を離した彼女の指先には、ほんの少しだけ血がついていた。