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大人のための異文童話集2

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第16話 月天使かぐや



なぜ私は月を見て泣くのでしょう。
時に切なくなり、時に暖かくなり、私に向かって悲喜こもごもな姿を見せる、あの月にどうして…私は惹かれてしまうのでしょう。

満る月の姿見は、私にはとても切なくて、そして、儚いものに思えてしまう。
朔たるは、何故か私に安堵と安らぎをもたらしてくれる。
弓張りの月を見て、心がざわめいて落ち着きを無くしてしまう私は…、誰?

女は今宵も月を見ながら、そう言っては涙を流すのでした。
それまで黙って傍にいた男は、ゆっくりと口を開きました。

 「かぐや、私はお前に話しておかなくては…ならないことがあります。」

男はそっと、かぐやと呼ばれた女の長く美しい黒髪を撫でながら、ポツリとそう呟きました。
その声にはどこか元気がなく、物悲しさ帯びているようでした。

 「此方様。お話し…それはいったいどのようなことでしょう?」
 「そのお話しと言うのは、私が先ほどまで想っていたことに関係があるのですか?」

美しいだけではなく、賢くて察しのいいかぐやと呼ばれた女は、男の語り口だけでそう感じ取ったのです。

 「薄々は…お前も気付いていることでしょう。」
 「そしてそのときがもう直、やって来るということも…」

男はそこまでいうと言葉に詰まりました。
かぐやと呼ばれた女は、そのとき見せた男の顔を生涯忘れないでしょう。
女はいままで、これほどまでに切なく、寂しく、そして絶望に満ちた表情を、見たことがありませんでしたから。

 「此の君より産まれ出でたとのこと…」

また男がポツリと呟きました。

 「ええ?」

その声はとても小さく、はっきりと聞き取ることが難しかったため、かぐやと呼ばれた女は聞き直したのです。
しかし男はそのまま話を続けるのでした。

 「嘘か誠かは、私にもはっきりとはわかりません。」
 「いや、きっとそのようなこと…」
 「これまでは嘘に決まっていると思っていました。」
 「しかし、最近のお前の様子を見ていると、もしや真なのかと…私はそう思い始めたのです。」

かぐやと呼ばれた女には、最初に言った男の言葉がよく聞き取れなかったため、男の話していることがよく掴めません。
それよりも、傍でそう話してくれる男の気持ちの辛さだけが、自分の胸さえも締め付けるほど、とても苦しいものだと感じるのでした。

 「かぐや、どこにも行かないでおくれ。」

そう言って男は、しっかりと女の肩を抱き寄せるのでした。
今度はかぐやと呼ばれた女にも、はっきりと聞き取れました。
それはこれ以上にはないというほどの、切望と懇願が込められた男の言葉でした。

 「いったい…今宵の此方様はどうしてしまわれたの?」
 「私は決してどこへも行きはしません。」
 「いつまでもずっとこうして、此方様の傍におります。」

そう言ってかぐやと呼ばれた女は、自分の肩に当てている男の手を、しっかりと握りしめました。
それは仲秋の名月が訪れる、少し前の宵のことでした。