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大人のための異文童話集2

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きっと夢想花は汚れた小川ではなく、このように清らかな流れの中に、最後の身を置きたかったのでしょう。
月明かりに照らされて煌めく水面は、まるで生まれたばかりの清らかさを讃えているよう。
そしてそこに浮かぶ夢想花は、先ほどまでの紅蓮の花びらをいまは淡いピンクへと変えて、楽しそうに水面を舞っているようでした。

緩やかな流れに舞って、時には浅く沈み、時にはゆったりと揺られて。
それはまるで、小川の流れと夢想花の慈しみのよう。
見ている私には、そのように思えたのです。

流れの速度は一見して緩やかに見えても、それこそ千差満別に変わるもの。
きっと浮かぶ夢想花は、それぞれの流れの中に身を置いて、様々に悦びを感じているのかも知れません。

その悦びは小川の流れにも伝わっているのでしょう。
月明かりに照らされた水面の輝きと煌めきは、夢想花が舞うたびに違った光を返しています。
私はそんなふたつの戯れに夢中になって、いつまでも後を追います。

あれほど老いて見えた夢想花、あれほど淀んで見えた小川。
でも、今ここにはそんな姿などなくて、互いの隆盛の時を再び取り戻しているようでした。

宵月が照らしていた空が白々と明ける頃、とうとう小川の流れも終わりとなります。
それまでの楽しい時間を過ごしていた小川の流れと夢想花は、時間を止めようとするかのように、ゆっくりとその動きを止めようとしていました。
小川の流れはそのまま、大海へと羽ばたいて行きます。

そして夢想花は・・・
いつの日にか咲いてこれまで何十年も、閉じることのなかったその花びらを、そっと閉じながら、小川の流れがまだ小川と呼べる場所に、その身をゆっくりと沈めて行ったのです。

そして不思議なことに、沈み行く夢想花が閉じようとする、その花びらの周りには、いつからついたものか花びらを抱くように、たくさんの気泡が包んでいました。

私はそれを見て思うのです。
夢想花と呼ばれた名もない花は、終らぬ夢がいつ頃か始まって、その終わりを求めて老いてもなお咲き続けていたのだと。

そうして夢の終わりに安堵を与えてくれる、清き水面の流れをひたすら待ち、今宵やっと出会えた。
そして精一杯の最後の精気をもって、我が身を紅蓮に染めて清き水面の輝きに言い寄り、結ばれたのだと。

そうすることできっと、それまで止められた夢の続きが動き始めたのでしょう。
再び燃え上がったその想いで、恥ずかしそうに身を淡い色に染め、小川の流れと体を合わせては共に慈しむ。
浅く深くと何度も身を入れ替えては交わり、心地よい肌に酔いしれたように揺らめいて、安らかな眠りの中で長かった夢を終えたのだと。

何も知らない私には、それは今宵一夜の出来事。
しかし、ひたすら咲き続けていた夢想花と、常に流れ続けていた小川の水面には、きっと一夜も刹那。
とはいえここまでの道のりを思えば、とても長く至福の時を過ごしたようにも思えるのでした。