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VARIANTAS ACT6 閉鎖

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 人を戦闘に巻き込んでおいて、挙句の果てに協力しろ…か。
 『勝手な連中だ』と、ビンセントは舌打ちをした。
 そうしながらも彼は、乱れなく機体を操作。
 戦場を翔る、ビンセントのロンギマヌス。
 赤銅色の機体は、戦場を舞い踊るように、軽やかに機動した。
「お仲間を助けろか…あの野郎、簡単に言ってくれるぜ…!」
 つい数分前の記憶―


「やだ。めんどくせぇ」
 ビンセントは、120㎜弾をソルジャーに撃ち込みながら、無線に向かって悪態をついた。
「お前と口論している暇はない。いいから、そこから11時の方向に見える部隊を援護して来い。先陣を切って突撃しろ。お前なら蹴散らせるだろう?ヘルゲート」
 冷静な口調で答えるグラム。
「…本当に…突っ込んで援護するだけでいいんだな?」
「ああ」
 ビンセントは少し考えてから言った。
「…で、お代はいかほど頂けるんで?」

 そして今、彼の機体は部隊に向かって飛行している。
 FCS画面で、カノンの残弾チェック。
「30…余裕…か?」
 微妙な数字。
「まあ、やばくなったら逃げよ」
 交戦区域に突入。
 ソルジャーが左前方から接近。ビームカノンを発砲。
 ビンセントは、瞬間強く左足スラスターと背面ブースターを噴射。
 機体をロールさせながら上昇。
 ビームを回避。
 即座に、自分から接近してカノンを発砲。
 撃破。
 機体をさらに進める。
 射撃視界に入るソルジャーの編隊と…
 大きなブレードを持ったヴァリアント?
「あれ?」
 脳内に一瞬のブランク。
 ビンセントは気付いた。
「ぬおーーー! 騙された!」
 ナイトがロンギマヌスに向かってブレードを向けた。
 光る刀身。次の瞬間、鋭い閃光とともに、ビームが発射された。
 即座に回避行動。
 ビームはロンギマヌスを掠め、塗装を燃やす。
「この野郎! ブッ飛ばしてやる!」
 ビンセントはナイトに向けてランチャーを向け、突撃していった。




************




 空を飛び交う緑色のビーム。
 ソルジャーの放つビームカノンの閃光だ。
 その中に混じる、赤色のビーム。
 その赤色のビームが発せられる度に、空中に爆炎が散る。
「サラ!ナイトはどこ!?」
「サーチします!」
 グリッドマップを展開。
 赤い四角は敵機。緑の四角は友軍機。中心のオレンジが自機。
 広域スキャン。
「いました!ナイトです!」
 捕捉。
 単機で部隊に切り込んでいる。
 レイズはナイトに向かって機体を突撃させた。
「サラ、高機動戦闘になるけど…スラスター制御大丈夫?」
「…ええ…大丈夫です!」
 サラは額に汗を浮かべていた。
 長い戦闘時間。
 レイズもサラも消耗している。
 もう、長引かせる事は出来ない。
「サラ、もう少しだから…がんばろう!」
「はい!」
 接近し、ナイトを確認。
 スパローの部隊と、それに襲い掛かるナイト。
「いけない!」
 ナイトが一機のスパローを追い回している。
 そのとき、ナイトがブレードを振り上げ、スパローに切り掛かった。
 ナイトを掠めるビーム。
 レイズが放ったビームだ。
 ナイトはビームを回避し、体勢を立て直すためにスパローから離脱。今度はレイズに向かって来た。
 高速で接近するナイト。
 レイズは、機体全身に装備されたスラスターを点火し、凄まじいスピードでナイトに迫った。
 正面から接近するナイトとレイズ機。
 双方ともにビームを撃った。
 交差するビーム。
 レイズ機の頭上を、二本のビームが掠める。
 レイズの放ったビームはナイトのすぐ右横を掠めた。
 すれ違う両機。
 空気抵抗で軽い衝撃波が生じる。
 レイズは機体を急旋回させ、ナイトを追跡。機体を並走。
 ビームを撃ち合う。
 互いの機体は凄まじいスピードで機動しながら撃ち合っている。
 何度もトリガーを引くレイズ。
 しかし、そのビームはことごとく回避された。
 ベクトルフィンの出力を上げたのだろう。ナイトの後方が陽炎の様に歪んで見える。
 レイズがビームを撃つたびにナイトの機動性はみるみるうちに上がっていった。
 ベクトルフィンと、増設されたバーニアで、物凄い機動性を発揮するナイト。
 慣性をまったく無視した鋭角の軌道。
 人間業ではない。
 ナイトはもはや、今レイズ機が発揮している相対速度では捕捉が困難な物となっていたが、レイズは必死に、射撃レンジ内へナイトを治めようとした。
「捕捉しきれない! サラ、もっと出力を!」
「…ん…はっ! …くぅ……も、もう…これ以上は…!」
 苦しそうに息を弾ませるサラ。
 これ以上彼女に、負荷を掛ける訳には行かない。
 レイズは最大限の力でナイトを追撃した。
 だが、ナイトのスピードについていけない。
 攻撃をギリギリ回避するのが精一杯だ。
「(私に…もっと力があれば…!彼はもっと!もっと!強く!…お姉さま…!)」
 サラの時間感覚に、一瞬の空白。

『その温かさを忘れない限り、あなたはずっと、彼を守ることができるわ…』

 突然サラの脳裏に、エステルの言葉が響いた。
 甲高い音を上げる機体。
「サラ!?」
「私は、あなたを…! 守りたい!!」
 スラスターに注ぎ込まれる膨大なエネルギー。
 凄まじい加速度を得る機体。
 巨大な推力を発揮する背面大型スラスター。
 機体はみるみるうちにナイトに迫り、ついに、再びナイトと並走。
 凄まじい水しぶきを上げ、目にも留まらぬスピードで過ぎていく二機。
 そして二機は、海面に巨大な白波を立てて、直角に上昇していった。
 高速で旋回しながら、螺旋を描いて、垂直に上昇していく二機。
 やがて機体が見えなくなる高度に達し、レイズ機とナイトの残した軌跡が二重螺旋を形成。
 そして軌跡さえも見えなくなったその時、遥か上空で、二本の光線が交差し、一つの火球が咲いた。

 レイズ機が上空から、ゆっくりと降下して来る。
 レイズは腕を伸ばし、サラの頭を撫でた。
「ありがとう…サラ!」





************




 ビンセントは、基本的に大雑把な性格の男だ。
 小さいことは気にしないし、人を深く恨んだりしない。
 女好きだが、猥雑な生活を送っている訳ではないし、口は悪いが、性格が悪い訳ではない。
 だが、今は別。
「ちくしょうあの野郎、必ずぶん殴ってやる、ぶん殴ってやる、ぶん殴ってやる。そして叩っ切る!」
 恨み節を連呼しながら、機体を操作。
 スラスターペダルをいっぱいまで踏み込み、コントロールレバーを素早く、それでいて大胆に。
 戦闘中は繊細な性格になる。
 レーダーを逐一確認。
 機体背面、上方にソルジャーが一機。
 ビームカノンを発砲。
 機体を右へヨーイングさせ、右ロール。
 ビームを回避。
 背面飛行しながらカノンを発砲。
 120㎜弾が、ソルジャーを貫く。
 極近接レーダーに反応。
 前方に敵機。
 機体を180度、縦に回転させ、脚を向ける。
 脚部スラスターを強く噴射。
 ブレーキと共に、機体を鋭角に方向転換させる。
 機体の軋む音を無視して、ランチャーを発砲。
 撃破。
「くそ! 俺の相手はてめぇら雑魚じゃねぇ!」