VARIANTAS ACT6 閉鎖
ミサイルが爆炎を上げ、拡散ビームが次々にHMAを捕らえていく。
「前衛部隊突破されました!」
空母の周辺に展開する駆逐艦と巡洋艦が、ファットネスに向かって弾幕を展開。
次の瞬間、ファットネスから発せられた四本の高出力ビームは、空母エスペランサの右舷に命中した。
「右舷に直撃! グラビティシールド一部消失!」
「司令! このままでは!」
「分かっている! 最寄の海兵隊機へ発令! 艦隊内での発砲を許可する。ファットネスを撃破せよ!」
この司令は全海兵隊機へ発せられた。
艦隊のもっとも近くにいた部隊は『ブロンコ小隊』だった。
「ブロンコリーダーから各機へ! 艦隊の危機だ! 即座に艦隊へ向かう! これはガルス中将から直々の司令だ! ブロンコ小隊の輝かしい経歴に傷をつけるな!」
瞬時に集合し、編隊飛行。艦隊へ急行。
「敵はファットネス四機! 背後の死角から集中砲火を浴びせる! ガン・ランはシャロー! 残弾の有る者はマイクロミサイル発射後、対装甲ミサイルを全弾発射! 動きを止めてからメタニウム弾でとどめを刺してやれ!」
後方から迫るブロンコ小隊。
随伴のソルジャー5機が、くるりと向きを変えて背面飛行し、ビームカノンを撃った。
ビームを巧みに回避し、まとめてロックオン。
「発射ァ!」
背面のミサイルポッドから大量のミサイルが発射される。
ソルジャーはミサイルに向かってビームカノンを撃った。
ブロンコ小隊はミサイルを援護して、100㎜バトルライフルを発砲。
メタニウム弾が次々にソルジャーを撃破。
それを察知したファットネスはコンテナからミサイルを発した。
ミサイル同士がぶつかり合い、爆炎をあげる。
その間を縫って、BGM―70対装甲ミサイルがファットネスに迫った。
海面スレスレを飛行したそれは、ファットネスのミサイル網をくぐり抜けていたのだ。
各ファットネスに、数発が命中。
爆音と巨大な衝撃波を発し、ファットネスの装甲が砕け散った。
即座に接近するブロンコ小隊。
背面から、失速したファットネスに迫り、バトルライフルを連射。
メタニウム弾を背面から何発も打ち込まれ、炎を上げるファットネス。
次の瞬間ライフル上部のローディングクリップが跳んだ。
パイロットは、あわてることなく前腕部に装備された三連マシンカノンを発射。
ファットネスを、暗い海の底に沈める。
「本部、こちらブロンコ小隊、ファットネス撃破!」
ブロンコ小隊は役目を果たし、機体は誇らしげに雲の尾を曳いた。
************
突然、センサー群が慌しく警告音を喚き散らした。
「各艦、発射警戒! ゲートから第二波! 射線上にソルジャー多数!」
ゲートを守るように、ソルジャー達はアーチャーの射線を遮った。
同時に、ナイトがアーチャーに迫る。
「アーチャー各艦! ナイトの編隊が向かっている! 射線確保まで援護する! 応戦しろ!」
各アーチャーを守るために、部隊はナイトの編隊の前に集結していった。
アーチャー各艦は、対空ミサイルを発射。
部隊はナイトに向かって、集中砲火を浴びせた。艦隊の攻撃も届いている。
しかしナイトは機動力に物を言わせて、回避。
ソルジャーは編隊を維持したまま、高速飛行から安定浮遊に移った。
編隊から離れ、先行するナイト。
それにあわせ、ソルジャーは肩装甲を長大なビームカノンへ変型させ、そして、一閃。
ソルジャーはナイトを援護するように、高出力のビームを放ち、瞬時のうちに弾幕を張った。
部隊に迫るナイト。
両手に持ったガンブレードを振り上げ、一機の海軍機に接近。抵抗の暇すら与えず、縦に両断する。
ナイトは次々に部隊のHMAに襲いかかり、空を爆炎で埋めていった。
「ナイト、防衛部隊と交戦!」
「だめです! 戦力が足りません!」
「アーチャーの撤退を提案します!」
「撤退はしない」
作戦司令室にグラムの声が響いた。
「アーチャーは現状を維持。別命あるまで待機する」
Captur 4
「左上方12度、敵機2!」
彼は機敏に反応し、右足のバーニアを一瞬強く噴射。
機体を流れるようにライドさせ、ガトリング砲を発砲。
一機破壊。残り一機。
「まずい…弾がそろそろ無いな…」
「どうします?」
「左手の制御、任せるよ。ハンドガン、使って」
サラは、レイズ機の左手で、57㎜ハンドガンを抜いた。
安全装置を解除。
残る一機のソルジャーはミサイルを発射。
アクティブホーミングで4基。
「サラ!」
「了解!」
サラはハンドガンでミサイルを撃った。
器用に素早く発砲。
二基破壊。
左から二基。
サラはハンドガンをミサイルに向け、レイズはガトリングをソルジャーに向けた。
そして、同時に発砲。
ミサイルとソルジャーの両方が同時に爆ぜる。
「後ろ三機!」
レイズは急反転し、トリガー。
一機のソルジャーを捕らえる。
爆散。
残り二機。
残り弾数が少ない。
レイズはハンドガンを捨て、ガトリング砲のグリップをしっかりと保持すると、ソルジャーに狙いを定めた。
残り弾数は50以下。
一機のソルジャーがビームカノンを発砲。
レイズは肩のバーニアを噴射し、右水平移動。ビームを回避する。
立て続けに、二発目と三発目が迫った。
背面メインブースターを強く噴射し、素早く上昇。二発目を回避。
三発目が迫る。
「グラビティシールド全開!!」
次の瞬間、グローネンダール左腕に搭載されたグラビティシールドユニットが起動。
展開したグラビティシールドでビームを防御。
間髪入れずにガトリングを発砲。
一機撃破。
左腕から、焼きついたシールドユニットが脱落する。
残る敵機は一機。
ソルジャーは撃てるだけの全てのミサイルを発射した。
レイズ機に迫る、無数のミサイル。
「チャフ、全弾射出!」
大量にばら撒かれる金属片。
ミサイルは金属片に反応して起爆。
ソルジャーの目の前を塞ぐ爆炎を突き抜け、ガトリングを叩き込む。
爆散するソルジャー。
「ふう…」
「…弾薬が尽きました…」
「うん…みんなと一緒に補給に行けばよかった…」
レイズ機の前方には、多数のソルジャー。
「だから、無理はするなといっただろ…」
無線に響く、グラムの声。
次の瞬間、ディカイオスのホーミングレーザーが、レイズ機の頭上を通り過ぎていき、レイズ機の前に炎のカーテンを形作った。
「大佐!」
「レイズ、お前は今から、アーチャー02の援護に向かえ! ナイトがいる!」
「了解!」
「待て!レイズ!」
グラムは、レイズ機に向かって、一丁の火器を投げ渡した。
「これをもっていけ!」
それはHMA用のビームカノンだった。
「お前は、俺の部下だ! 勝手に死ぬ事は許さんからな!」
「了解!!」
レイズはバーニアを最大出力で噴射。
凄まじいスピードで『02』の元へ向かった。
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「まったく!サンヘドリンもヴァリアントも、迷惑な連中だぜ!」
ビンセントはコクピットの中でぼやいた。
作品名:VARIANTAS ACT6 閉鎖 作家名:機動電介