VARIANTAS ACT6 閉鎖
レイズは機体をさらに交戦の激しい区域に突入させた。
Captur 3
コクピット内のコンソールに表示された、FCSの弾数カウントが、凄まじい勢いで減っていく。
チェインガンの速射性能は凄い。
給弾はベルトリンクで、作動方式は電気作動。
ジャムが少なく、不良弾が有っても、何事もなく強制排出され、次弾をチャンバー内に送り込む。
対空戦闘にはうってつけの武装だ。
だが、発射する弾体が、『敵』に対応した物でなければ、その用を果たさない。
「だめだぁ!DU弾じゃ効きやしねぇ!」
ビンセントはバックで飛行しながら、ソルジャーに応戦した。
トリガーはさっきからずっと引きっぱなしだ。
自分を狙うミサイルを撃ち落し、ロックオンをソルジャーに変更。
劣化ウラン弾を吐き出す100mmチェインガンが、ソルジャーに砲弾のシャワーを浴びせる。
ソルジャーの身体から、まばゆい火花が散った。
装甲を貫いたのではない。
砲弾が弾かれ、変形した際に発生した火花だ。
凄まじい音を立てながら、ソルジャーの高分子複合素材製装甲板が、チェインガンの砲弾を退けていく。
それでもビンセントは、自分を追尾してくるソルジャーに向かって、チェインガンを撃ち続けた。
「うおおおおおお!!」
雄叫びを上げながら、トリガーを引き続ける。
距離を縮めるソルジャー。
チェインガンの弾数カウントが、『0』になったと同時に、ソルジャーはビンセントの機体を掴み、『口』を開ける。
「ぬお!?」
メタニウムを用いていない装甲素材は、彼らヴァリアント達にとっては恰好の『食物』だ。
大口を開け、ビンセントの機体に迫るソルジャー。
「なめんなよ!コラ!!」
右腕に装備されたパイルバンカーが低い唸り声を上げる。
「喰らいやがれ!」
ビンセントがソルジャーの腹部にパイルを突き立てる。
咆哮と共に巨大な薬莢が排出され、特殊合金製の杭が、ソルジャーの装甲を大きく陥没させた。
もう一度トリガーを引く。
鈍い金属音が、HMAの腕部を伝わってコクピットの中に響く。
パイルは、ソルジャーの腹部に深々と突き刺さった。
「今まで、何十人もの血を吸ってきた特殊合金製パイルだ! 対ヴァリアント仕様じゃなくても…」
彼は、追い討ちを掛けるようにもう一度パイルを撃つ。
「…なかなか効くだろう?」
ソルジャーは胴体を砕かれ、真っ二つになり、爆炎を上げながら墜落。
突然、コクピット内に警告音が響いた。
「パイルリローダー故障!? ちっ! こんな時に!」
ビンセントは、右手のパイルバンカーを弾切れになったチェインガンと共にパージ。
彼は右腰のアサルトライフルを抜いた。
「さらば…友よ…」
「旦那!冗談言ってる場合じゃないっすよ!?」
次々と集まってくるソルジャー。
「あああぁああ! ド畜生がぁぁ!!」
ライフルの咆哮が虚しく響き渡り、真鍮色の薬莢が宙を舞う。
ビンセントはこの時、人生で初めて『死』を覚悟した。
――マジで…ヤバイかもしれない…
彼は、弾を撃ち尽くしたライフルを、ソルジャーに向かって投げつけた。
「来いや! この野郎!」
「旦那!!」
ソルジャー達が、一斉にビームカノンを放った。
ロンギマヌスに迫るビーム。
「(あーあ…俺も『年貢の納め時』って奴かぁ…せめて最後に、酒呑みたかったなぁ…)」
次の瞬間、ロンギマヌスの目の前にミサイルが飛来し、爆炎が散った。
「のお!?」
次々に飛来し、ソルジャーの射線を遮るミサイル群。
側面から『銃撃』を受けるソルジャーたち。
その銃撃は、ソルジャーを一撃で破壊し、その『弾丸』は命中した箇所を跡形もなく消し去る。
ビンセントは直感的に悟った。
「グラァーーーム!!」
ビンセントのもとへ飛来するディカイオス。
「エステル、フレズベルグ、リロード」
ディカイオスの手には巨大な拳銃が握られている。
グラビティーレールガン『フレズベルグ』だ。
マガジン内に亜空間コンテナを接続し、弾丸を転送。
彼は両手に握られた二挺拳銃をソルジャーの群に向け、何の迷いも無く、一心不乱に巨大な弾丸を叩き込む。
「ビンセント…なぜこんな所に居る?」
グラムはロンギマヌスに回線を繋いだ。
「うるせぇ! お前に話すことは何もねぇ!」
グラムは強がるビンセントを一笑して言う。
「丸腰のようだが?」
「…傭兵ごときの武装じゃ、歯が立たねぇ!俺のパイルもぶっ壊れちまった!」
「腕が鈍ったか?ヘルゲート…!」
「なにぃ!?」
ビンセントがグラムに食い掛かろうとしたその時、目の前にHMA規格の重火器が現れた。
「何のつもりだ?」
「見て分かるだろう?『武器』だ。120mmセミオートカノン。砲弾はレーザー誘導対装甲砲弾。お前なら使いこなせるだろう?」
「へっ…! 『ヘルゲート』の二つ名を、嘗めるなよ?」
ビンセントがガンランチャーを手に取る。
「さて、行こうか…ヘルゲート…」
「言われるまでもねぇよ!ヘルファイヤー!」
ビンセントは、ボルトを引いて初弾を装填、ランチャーを構えた。
そして、ソルジャーをロックオン。
画面に丸いロックケージが現れる。
「さてと、久しぶりにハッスルさせて貰うぜ!」
背中合わせの二機は、堰を切るように加速。
「降ろしてぇぇぇ!!」
ハリーの悲痛な叫びを残して。
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[0700時、サンヘドリン中央作戦司令室]
「パワーポイント、算出完了まで120秒! 各『アーチャー』荷重力弾発射まで、125秒!」
「境界面、再び活性化!」
「第二波、来ます!」
「ソルジャー他、『ファットネス』、及び『ナイト』を確認!」
ゲートから、新たに多数のヴァリアントが現れた。
その中には『ナイト』や、『ファットネス』と呼ばれる上位指揮種もいた。
『ナイト』は白兵戦闘に特化した機体だ。
内蔵兵装はミサイルだけだが、強大な機動力と、ブレード状の手持ち武器を持っている。それが三機、一機毎に6機のソルジャーを随伴させ、編隊を組んでいる。
『ファットネス』は砲撃戦闘に特化した機体だ。
強大な推力に、大量のミサイルと強力なビーム兵器を持つ、重装甲機。
それが四機、同じように編隊を組んで海面スレスレを飛行し、艦隊に迫っている。
「ファットネス四機、艦隊に向け高速接近!」
「ナイト各編隊、アーチャーへ向かっています!」
「各砲艦、長射程レールカノンでナイトをインターセプト! 対空ミサイル全弾発射! 絶対にアーチャーへ近付けさせるな!」
「了解!」
「本部から全艦へ! 各砲艦はナイトへDCA!」
「各艦、対空ミサイルを全弾発射! 全力を持ってナイトを撃破せよ!」
「ファットネス、前衛部隊と接触! 現在交戦中!」
艦隊が砲撃を開始したと同時に、ファットネスは防空部隊と衝突。
スパロー数機が、中距離対空ミサイルを発射。
それに対し、編隊を組む随伴のソルジャーがビームカノンで援護射撃をし、ファットネスは肩の巨大なミサイルコンテナから大量のミサイルを発しながら、右手に装備したビーム砲から拡散ビームを打ち出した。
作品名:VARIANTAS ACT6 閉鎖 作家名:機動電介