VARIANTAS ACT6 閉鎖
邀撃機は既にブレイクし、ミサイルは全て輸送機に向かっている。
「ちくしょう! しょうがねぇ!」
ビンセントはカーゴ室に向かった。
「旦那! どこ行くんすか!?」
「『ロンギマヌス』を出すの!」
「自分だけ逃げるんすか!?」
操縦士は凍りついた表情をした。
「んな訳無いでしょうが! 一緒に来い、ハリー! どうにか艦隊に向かうぞ!」
「ええぇ~!?マジっすか!?」
操縦士は止むを得なく、機体を自動操縦にし席を離れる。
ビンセントとハリーが機体へ乗り込む。
ハッチを閉め、スイッチを入れていく。
『ヴゥン…』と音がし、モニターが光る。
「Hurry! Hurry! Hurry!」
「え? なんすか?」
「お前じゃない!」
外からの爆音が、聞こえてくる。
「Oil pressure Normal Electronic system Normal…」
ビンセントは起動の遅い機体にいらつきを見せ、遂にキレる。
「ああ! くそ! 当該処理を中止! 項目を無視して強制起動!!」
あっけなく起動する機体。
ビンセントは輸送機のハッチを開けて、機体を外に放り出した。
「あー! 俺もイクサミコ欲しいー!!」
ミサイルが輸送艇に着弾。
火球が咲き、輸送艇がバラバラに吹き飛ぶ。
落下する機体。
残るミサイルが迫る中、ビンセントは回転しながら左腕のチェーンガンを発砲。
全方位のミサイルを打ち落とし、バーニアを全開で噴射させてブレーキ。
機体を安定させる。
迫るソルジャー。
「さてと、クソ野郎どもの相手はこれで最後にしたいぜ…」
そう言うと彼は、左手チェインガンをソルジャーに向けて撃った。
Captur 2
[0636時、『ヒュぺリオン』]
「ディカイオス、オリオンより発艦!」
「マリーン、301、302、303、一番デッキから発進!」
「304、305、補給作業完了!一番デッキへ!」
「401、402、403、発進準備完了!」
次々に出撃していくスパロー。
では既に戦闘が始まっていて、海軍機は編隊を組んで次々とヴァリアントの群れの中に突入していった。
「ブロンコ小隊、発進する」
カタパルトに乗り、発進寸前の海兵隊専用HMAのパイロットが言った。
彼は、『サンヘドリンインド洋第一艦隊海兵隊・ブロンコ小隊』の隊長だ。
電磁カタパルトで加速。
離艦と同時にタイミングよく重力制御をON。
HMA-h2CM・ペリウィンクルは、海兵隊専用の特殊戦機だ。
大量のミサイルと火器を運用する重火力機。
しかしその機体は、重装備とは思えないほどの機動性で、機体を加速させる。
発艦したほかの機体が隊長機に随伴し、編隊を組む。
「ブロンコリーダーから各機へ! 会敵後は各機散開! 該当エリア内の敵機殲滅後、ポイントで合流! 敵はヴァリアントだ! 全力を振り絞れ! 我々海兵隊の力を見せてやれ!」
「了解!」
鬼気迫る気迫で指示を出す隊長。
部下はみな、気合を込めて返事をした。
「敵機接近」
機体のイクサミコが敵機を感知。
「Break …Now !」
特別製の強化ブースターを噴射。
爆発音にも似た音と共に機体は急加速し、ヴァリアントの群れの中へ消えていった。
************
[0638時、海上交戦領域。DCS開始まで120秒]
「ダメだ! 振り切れない! 援護してくれ!」
コクピット内に響き渡るロックオン警告音。
一機のスパローを、ソルジャーが追撃している。
「無理だ! こっちも付かれた! 援護できない!」
「くそ!」
パイロットは機体を右にロールさせ、仰向けになり、そのまま急降下させた。
右腕リボルバーカノンをソルジャーに向け、発砲。
チェインガンから排出される薬莢が、重力に逆らって空へ上っていく。
ソルジャーは慣性を無視した素早い動きで、ライフル弾を回避する。
体勢を立て直し、海面スレスレを飛行。
水しぶきで敵の視界を遮る。
背面複合兵装ユニットにマウントされたマイクロミサイルを連射。
高度を上げ、海面を離れる。
待ち構えていたかのように、ソルジャーがビームカノンを発砲。
パイロットはビームを寸で回避。
ビームが海面に着弾し、瞬時に蒸発した水分が水蒸気爆発を誘発。
大きな水柱を上げた。
ソルジャーが、すかさずミサイルを発射する。
「ミサイル、6基接近。着弾まで30秒」
スパローに迫るミサイル。
パイロットは全身から汗が噴き出すのを感じた。
彼は機体を大きくライドさせ、ミサイルを撃ち落そうとリボルバーカノンを発砲。
一基の弾頭部に命中。誘爆で2基破壊。
残り三基。
チャフ射出。
目標を見失い、軌道を逸れるミサイル。金属片のカーテンに突っ込み、オレンジ色の爆炎が目の前で散る。
次の瞬間、爆炎の中からソルジャーが飛び出した。
右腕を振り上げ、超振動ナックルを起動させている。
その時突然、ソルジャーは無数の閃光に貫かれ、炎を上げて失速した。
HMAの横を、破片と炎を撒き散らしながら通り過ぎていき、海面に墜落するソルジャー。
海面は巨大な水柱を上げた。
「ディカイオス、エリア102、103、104、105の敵機殲滅!エリア106へ移動!」
HMAの頭上を通り過ぎるディカイオス。
「ディカイオス! 大佐、感謝します!」
「幸運を。気を抜くな!」
パイロットは機体の手で敬礼した。
「エステル、敵機数は?」
「前方に20、右に30です」
「よし、AHL用意。その他はミサイルで対応。フレズベルグを使う」
「了解」
グラムはトリガーを引いた。
ホーミングレーザーと、ミサイルが空中を乱舞し、ソルジャーを次々に破壊していく。
爆炎が空を埋め尽くし、海面を真っ赤に染めた。
「艦隊、DCS開始しました」
戦闘領域へ到達する艦隊の砲撃。
大型ミサイルや砲弾、高出力ビームがソルジャーたちを捕らえていく。
「『アーチャー』02、03配置完了。『アーチャー』全部隊準備完了しました!」
125㎜砲に荷重力弾を込めた駆逐艦が、配置についた。
「ディカイオスから全機へ! フェイズ01から02へ移行! 弾薬の尽きた者から随時補給! 第二波に備えろ!」
グラムは全部隊に指示を出した後、独立回線でレイズ機に通信。
「レイズ、そちらはどうだ?」
「大佐!? …こっちは!いっぱいいっぱいです!」
「部隊の消耗は?」
グラムは非常に落ち着いた口調で状況を聞いた。
「大きな消耗はぁ! …ありませんっ!」
「よし。私は未確認機を救出に行く。くれぐれも無理はするな」
そう言うとグラムはディカイオスを民間輸送機の元に向かわせた。
「了解!! ってもう切れてるし!」
レイズ機に迫るソルジャー。
レイズは機体を巧みに機動させ、迫るソルジャーを回避。
ソルジャーの背面に100㎜ガトリングガンを連射。メタニウム弾を叩き込む。
「サラ!マガジンチェック!」
サラが機体の装備する弾薬をチェック。
「ガトリング砲残弾400。ハンドガン一丁とそのマガジン4つです」
「まだいけるな…」
作品名:VARIANTAS ACT6 閉鎖 作家名:機動電介