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詩篇 蒼いけむり

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第十八篇 おかえり


おかえり。
暗い顔してどうしたの?

ちょっと仕事で…
そういうキミは、今にも泣き出しそうな顔をして

わたし、やっぱり才能ないのかなぁ…
ぽつりと呟く。

愛おしいその瞳から、涙が一粒ぽろりとこぼれた。

ボクにはそんなキミをどうすることも出来ず、今はただそっと抱きよせるだけ。

するとキミはボクにしがみつき、胸に顔を押し付ける。

ボクは、その柔らかな髪を撫でながら
仕事の失敗は、次が大切なのだから…

そう言ってキミの顎に指をあてて顔を起こす。

何て悲しい顔をしてるのだろう。
さあ…

ボクはいつものように、キミのくちびるに指をあてる。

すると魔法にでもかかったように、キミは微笑む。
うん。

少し、ほんの少しだけ、キミは元気になったよう。

作品名:詩篇 蒼いけむり 作家名:天野久遠