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詩篇 蒼いけむり

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第十七篇 お風呂


お風呂入るね。
キミそう微笑みながらボクに言う。

え、湧いてる?
そうボクは聞き返す。

ううん、今から…
キミは応える。

それじゃボクがやるから、キミはもう少しゆっくりしていてもいいよ。
悪いわね。

別に大したことじゃないから。
そう言ってボクはお風呂を湧かしに行く。

少し時間をおいてボクが戻ると、
無邪気な顔をしてテレビを覗き込んでいるキミがいる。

キミはいつものようにリモコンを眺めながら、ふと薬指を下唇に添えてみせる。

それを見て取って、ボクはゆっくりとキミの後ろに立つ。
するとそれに気づいたキミが振り向いて微笑む。

何見てたの?
そういいながら、ボクはキミの肩に腕を回す。

キミは肩に回されたボクの腕に、そっと手をのせて答える。
うん、このリモコンのね…

ボクは“…ね”までを言って、少し開いたその唇にそっと唇を重ねる。

キミはゆっくり目を閉じると、肩に回した私の腕に頭を預ける。

くちづけが続くほどに、キミはボクの腕にのせた手に力を込める。
そしてしばらく時間は止まる。

キミはそっと目を開けて言う。

ねえ、もう…
うん、でもお風呂も見ないと…

ボクがそう答えると、また時間が動きだした。

作品名:詩篇 蒼いけむり 作家名:天野久遠