Minimum Bout Act.04
No.15「難民」
朝からカッツはMB基地内を行ったり来たり、妙に落ち着きがない様子でいた。
部屋から出て来たシンは、ちょうど部屋の前の廊下でそわそわと似つかわしくない表情のカッツと出くわし、首を傾げる。
「どうしたんだ? 朝からやけに落ち着きがないみたいだな」
うーんと唸るように顎を手でひとさすりすると、カッツは口を開いた。
「リドヒムの反政府軍の連中から連絡があって、難民受け入れの許可が下りたらしい」
「本当か? 良かった。案外早く許可が出たんだな」
シンはリドヒムでの出来事を思い出し、一瞬遠い目をして安堵の声を漏らす。しかしカッツの表情はそれとは違った。
「……何か問題でもあるのか?」
気づいたシンが尋ねる。
「それが、エンド政府の連中、アインに受け入れ先を決めたらしいんだ」
「アイン?」
アインとは、カッツの生まれ故郷で、人が生活をするには過酷な気候地帯である。そこに難民を受け入れたとしても、満足に生活が出来るようになるとは到底思えない。
「どうも政府の連中、難民の中から俺が行った軍養成学校に入る人間を募って、その家族は優遇するとからしいんだ」
「リドヒムで戦争を経験して苦しんだ難民を、政府軍に入れようと言うのか!?」
驚いた。これでは何の為に難民受け入れは任せておけと大見得を切ったか分からない。
「それで何でカッツはうろうろしているんだ? 政府に掛け合うんだろう?」
「そのつもりなんだが、セイラと連絡が取れねえんだ……ついでにルーズの奴も見当たらねえし」
二人は顔を見合わせる。
こういう時に感じる「嫌な予感」というのは、案外的中するのだ。
「セイラはカッツの事となると見境がなくなるからな」
ぼそり呟いたシンに、カッツは眉間に皺を寄せると両手で頭を掻きむしった。
「ええーいくそっ! ここでうろうろしてても仕方ねえ。行くぞ、シン!」
「連絡が取れないのにどこに行くつもりなんだ?」
「お前のその冷静なツッコミ、本気で腹が立つなあ! 」
作品名:Minimum Bout Act.04 作家名:迫タイラ