小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

VARIANTAS ACT4 友

INDEX|3ページ/4ページ|

次のページ前のページ
 

 通路に向けライフルを照準。
「来ます!」
 ぺたぺたと有機質な足音を立てながら現れた『それ』は、人の形をしていながら確実に人ではなく、青白い肌(装甲?外皮?)をしており、だらりと伸びた腕や異常に長い首…とにかくグロテスクな姿をしている。
「何だ!こいつら!?ガードロボットか!?」
「いや…ロボットじゃない…!生体反応がある!」
「じゃあこいつらは一体…!?」
 ふと気づく。
 群れの中に、見慣れた戦闘服を着た奴が居る。
 それはまさしく…
「おい…あれ、ジェネシックの戦闘服じゃないか?」
 リックがそう言った瞬間、そのヒトガタの物はカクカクと首を動かし、「ぎゅいああああ」と奇声を発しながらゆっくりと腕をヴァン達に向けた。
「全員…撃てぇぇ!!」
 ライフルを発砲。
 50口径カービンから吐き出される徹甲弾がその『ヒトガタ』を引き裂いていく。
 赤なのか紫なのか分からない色の血を噴出し、耳障りな奇声を上げて倒れる『それ』。
 その全てを『射殺』し、隊は再びポートに向かって急いで移動し始めた。
「ちくしょう!何なんだ!一体ありゃあ…!」
 リックは言葉に出来ない生理的な恐怖感と苛立ちで思わず叫んでいた。
「あれは人間だよ…」
「E・J…今なんて言った…?」
 自分の耳を疑うリック。
「だから、あれはここの人間…ここの研究員さ…。マザーコンピューターはナノマシンに侵入された生物は死ぬと言っていたけどそれだけじゃない…死ぬのは寄生された生物の意識だけ…体内のナノマシンは神経組織を侵蝕再構成して、自分のネットワーックを作る。そして、珪素などの元素を用いて宿主の体構造を作り変える。戦闘に適した形にね…あの主任研究員はその前に自分で命を絶った…生きた屍になる前に…」
「対人ヴァリアント…」
 ヴァンが反応して答える。
「そう…大戦末期の『ファーストムーブ』時に人サイズヴァリアントは確認されているんだ。それに操られた人間もね…隊長は知っているよね?」
「ああ…確かに戦ったことがある…とんでもない化け物さ…だが俺たちが戦った奴らとは姿がまったく違う!」
「こいつらは未だ第一段階なんだよ…!」
「それじゃあ、あのジェネシックの連中は!?」
「彼らが失敗したから、俺達がここに居るんだよ!」
 次の瞬間、またもやMAPSのレーダーに動体反応。
「上前方!数3!」
 天井の通気抗のネットを音を立てて破壊し、さっきと同じ『ヒトガタ』が出現。
 『ヒトガタ』の腕が展開し、何かを撃ってきた。
 『キンッ』という音を立て、MAPSの装甲に当たる。
「なんだ!?何か撃ってきたぞ?」
 それは石灰質の鋭い矢のような物だった。
「うげ! 気持ち悪ぃ! こいつら自分の体組織を撃ってやがる!」
 リックはライフルのトリガーを引き、ヒトガタを撃った。
 もう、発着ポートは目前。
 だが、隊員が見た物は…。
「そんな…」
 ドロップシップの周りに群がる『ヒトガタ』。
 パイロットはそれに首をもぎ取られて息絶えていた。
 エンジンも破壊されている。
「ちくしょう!」
 こちらに気づき飛び掛ってくる『ヒトガタ』たち。
 隊員たちは最大の火力で応戦した。
 相手の数は50以上。
 ライフルの弾丸はすぐに底を突いた。
「くそ!」
 ヴァンはライフルを捨て、腰の後ろに付いたホルスターからショートバレルのショットガンを抜いた。
 鋭いポンプ音のすぐあと、太いショットガン特有の銃声が響き、散弾が『ヒトガタ』の胴体に大きな穴を穿つ。
「爆発まで5分か…」
 ヴァンは一つのことを覚悟した。
 それは隊の全員も同じだった。




Captur 4

「おかしい…特機からの定期連絡がない…」
 基地の上に静止するHMA。
 それに乗ったレイズは、基地内の特機部隊からの連絡が無いことを非常に心配していた。
 そう遠くは離れていないはずなのに、部隊の様子がまったく分からなかった。
「レイズ軍曹、部隊から通信です」
 思いがけず、部隊側から通信が入った。
「こちら503、レイズ! 一体どうしたんですか!?」
 ノイズと銃声らしき音が混ざっている。
「いいか、レイズ、よく聞け。我々は脱出を断念する。基地内にいた敵によってシップは破壊された! お前は母艦に戻り、任務を全うしろ!俺達はこのままここに残る!」
 レイズは表情を凍りづかせた。
「いえ冗談じゃ有りません! あなた達を残して撤収するなんて!」
 レイズは叫んだ。
「レイズ=ザナルティー軍曹! いいかよく聞け! これは命令だ! いまお前がここに戻ればお前も巻き込まれる! これは、ヴァン=ロックハマー大尉からの最初で最後の命令だ…!」
 レイズは奥歯をかみ締め、コントロールレバーを強く握り締める。
「その命令は…聞けません…!」
「レイズ軍曹!」
「もう…! 自分はもう…仲間を失いたくありません! サラ! 機動推進制御起動! 基地内部に突入する!」
「了解」
「絶対に死なせはしない!」
 レイズのHMAは静止軌道を外れ、直角に方向転換した。


************




 一発の銃声を最後に、部隊は全ての銃器は弾薬を使い果たした。
「白兵戦でいくぞ…!」
 ヴァンたち隊員はブレードを握り締めた。
 人間をはるかに超えた力で繰り出されるパンチなどを寸でかわし、腕を切り捨て、踏み足を出して胴を両断。ヒトガタの上半身がずるりと落ち、ぴくぴくと痙攣しながらぐずぐずと崩れていく。
 爆発まであと三分足らず…
「だめだ…きりがない…」
 どこからとも無く沸いてくる異形の物にMAPSの装甲は傷だらけになっていた。
「あと二分…」
 その時、地面を伝って衝撃が、そして無線にレイズの声が響いた。
「みんな、カーゴに入ってください!」
 シップのカーゴは幸いにも酷い損傷を受けていなかった。
「全員脱出用意!」
 ヴァンは刃がボロボロになったブレードを捨て、両腕を構える。
「第一機甲師団第一機装大隊第二中隊第四小隊08特機隊隊長、ヴァン=ロックハマー!かかって来い雑魚ども!」
 ヴァンは先頭に立って戦った。
 隊員たちをカーゴに乗せるために一人で戦った。
「隊長!」
 自分の顔面に向かって伸びる腕を掴んでそらし、思いっきり引くと同時に、肘を突き出す。
 装甲に覆われた肘部が直撃し『ヒトガタ』の頭部が粉々に吹き飛ぶ。
「レイズ! 全員乗ったぞぉ!」
「ゲートを開けます!」
 レイズがHMAの脚部側面に装備された単分子ナイフを抜き、ゲートを切り開くと、急激な気圧の変化で外に向かって衝撃波のような突風が吹きぬけた。
 宇宙空間に向かって放り出されるヴァリアントたち。
「おわっっ!」
 その時、ヴァンがバランスを崩して外に放り出されそうになった。
「隊長!」
 E・Jがヴァンの腕を掴む。
「ぬぎぎぎ!」
 凄まじい突風と、MAPSの重量。
 E・Jが力を使い果たし、共に放り出されそうになったそのとき、リックとダンがE・Jを掴んだ。
 E・Jを思いっきり引っ張りカーゴの中にひきいれるリックとダン。