VARIANTAS ACT4 友
全員が乗ったことを確認したレイズは、HMAの右前腕に内蔵されたワイヤーを引き出し、シップを縛り、あまったワイヤーを手に巻きつける。
「サラ! 全バーニア最大出力で脱出!」
「了解!」
バーニアが一気に推力を開放し、月面の砂埃を巻き上げてレイズ機は基地を離れる。
爆発まであと40秒…!
その時。
「基地周囲に熱源!」
「なに!?」
最初に破壊したはずの対空砲台が次々に再生していく。
ナノマシンの侵蝕によって性質を変化させられた砲台はレイズ機に向かって発砲を始めた。
爆発まであと20秒。
「爆装ユニット、パージ!」
切り離されるユニット。
ユニットを楯にしてレイズは砲台からの攻撃を遮断。
宇宙空間に取り残されたユニットに砲台の光条が立て続けに命中。
金属のプラズマと化し、大量に装備されたミサイル類に誘爆。
瞬時に火の玉となった。
そして次の瞬間、基地内の爆弾に火が入った。
あちらこちらから閃光を発し始める基地。
そして、バーティカルな光の柱を上げ巨大な衝撃波を発し基地は跡形も無く吹き飛んだ。
「………」
長い沈黙が隊とレイズ達を包んだ。
どれくらい沈黙していたか分からない。
長かったのか、それとも非常に短かったのか…
「レイズ…」
「はい…」
「やったぞ…」
無線の後ろでは隊員たちの歓声が聞こえた。
「よくやった!よくやったぞ!レイズ軍曹!」
「はい…!」
目を潤ませるレイズ。
「軍曹、あとは帰還だ」
「ええ、分かってます!」
レイズは無線を母艦に。
「マザー、こちら503、任務完了。いまより帰還する」
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「レイズ=ザナルティー軍曹に第一機甲師団第一機甲大隊第一機兵中隊第五小隊からの異動を命ずる」
地球に帰ったレイズは司令官室に呼び出され、この言葉を聞いたとき口をぽかんと開けた。
「不服か?」
「あの…訳をお聞かせください」
「ヴァン=ロックハマー大尉への不服従だ。否定の余地はあるまい?」
「しかし、それは…」
「異動先は…」
ガルスはレイズの言葉を遮り、レイズの顔を見据えた。
「第一特殊機動戦闘団第一次準備部隊、『シェーファーフント』だ」
「へ?」
思わず間抜けな表情で、聞き返すレイズ。
「聞こえなかったのか?」
「いえ…あの…?」
「もう一度言ってやろう。ミラーズと共に部隊を作れ」
彼は口をかくかくと振るわせた。
「貴様の命…戦場で散らせてやる。それと、給料分以上は働いてもらう。覚悟しろ」
「そ、それじゃあ自分は…!」
「復唱は!?」
「サー・イエス・サー!」
ガルスに敬礼するレイズ。
かくして彼は、運命の歯車の一つとして回りだした。
[ACT 4]終
作品名:VARIANTAS ACT4 友 作家名:機動電介