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VARIANTAS ACT4 友

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 先ほど、指名をうけたリック、ミン、ダンを先頭に部隊はエレベーターに向かった。



**********



 特機の前に現れたのは1tコンテナが二つは入る大きなエレベーターだった。
「よし、E・J、開けてくれ」
 E・Jが端末接続。
 あっという間にゲートが開く。
「E・J!! 伏せろ!!」
 突然、ヴァンが叫んだ。
 エレベーターの奥の、床に座り込み、壁にもたれかかる人影に、前衛三人が素早くライフルを向ける。
 生体反応なし。
 熱反応もなし。
 死体だ。ガビガビに干乾びている。
「なんだ…死体か…」
 三人はライフルを下ろし、安全を確認してから隊はエレベーター内に入った。
「まったく、何で死体なんか……」
 行き先は最下層。
 メインコンピューター、セントラルターミナル。
 ゲートが閉まり一瞬の振動。
 そのあとは極めて静かに降下。
 エレベーターに乗っている間、ヴァン隊長は死体を調べていた。
「(完全に白骨化している…かなり昔に死んだな…)」
 その死体の胸にはIDカード。
「(…ジャン=クロフォード主任研究員…)」
 ヴァンはそのカードを取ると、死体のそばにあった物体に気がついた。
「(拳銃か…?)」
 良く見ると死体のこめかみには穴が穿たれていた。
 おそらくこの拳銃で自殺したのだろう。
「(なぜ、自殺なんて…)」
 エレベーターが最下層に到着。
 エレベーターのゲートが開き、目の前に巨大なコンピューターユニットが現れた。
「隊長、最下層です」
「よし、E・J、データの引き出し開始。それ以外は爆破の用意」
「了解」
 E・Jはメインコンピューターに端末を接続。
「OK、電源ライン接続。メインコンピューター起動!」
 手際よく作業を済ますE・J。
 リックとミンは持ってきていた大規模施設破壊用の特殊爆弾をセットしていた。
「解除コード入力っと…」
「あとはタイマー起動だけ…E・J、そっちはどう?」
「うん、もう終わる」
 E・Jに近づくヴァン。
「E・J、ここのコンピューターはAIを積んでるか?」
「もちろん」
「話せるか?」
「…? まあ今なら大丈夫だよ」
「よし」
 ヴァンは巨大なコンピューターコアに向かって話し始めた。
「おい、コンピューター。聞こえているか?」
「はい」
 コンピューターは室内のスピーカーを通して返事をしてきた。
「お前は?」
「はい、私は当施設の中央管理コンピューター、『HAL』です」
「質問だ。この施設は何の研究施設だ?」
「機密に反さない範囲でお答えします。ナノマシン、およびナノマシン集合体の研究です」
「何のナノマシンだ?」
「お答えできません」
「ではナノマシン集合体とは?」
「お答えできません」
 重要なことは何も話さない。
「では、ここはなぜ廃棄された?」
「事故です。施設内で事故があり、有害物質が漏れ出しました」
「有害物質とは?」
「ナノマシンです」
 騒然とする一同。
「…そのナノマシンは空気中にもあるのか?」
「いえ、空気中には存在しません。ナノマシンは単体で生存できません。群体を築き、安定できる場所を探します」
「安定できる場所とは?」
「炭素、水素、リン等の分子集合体です」
「(炭素? 水素?)」
 ヴァンは少し考えた。
「機械の中か」
「はい」
「生物の中も、か……?」
「はい」
「生物の場合はどうなる?」
「死亡します。死亡したその後のデータはありません」
「機械の場合は?」
「機械の場合は、回路を侵蝕し占拠します。そ、そ、そして、ここ、構造、を変化、させせせ、てて…」
 突然、変調をきたすHAL。
「リック、ミン…起爆タイマー起動! 全員急いで撤収だ!」
 起爆タイマーを起動させ、全員いそいでエレベーターに乗った。
「隊長!一体どういうことです?」
「ナノマシン集合体……あのコンピューターも侵蝕されていたんだよ!」
「ナノマシン集合体って何です!?」
「どこの誰だか知らないが、ふざけやがって…ここで研究されていたのは『ヴァリアンタス』だよ!」
 驚愕とする一同を乗せて、エレベーターは上の階を目指した。




Captur 3

「リック達大丈夫かなぁ…」
 心配そうな面持ちのレイズ。
「大丈夫ですよ…レイズ軍曹。彼らもプロですし」
 サラはレイズに、安心するように言った。



************



 特機隊を乗せ、スムーズに動いていたエレベーターが突然、『ゴンッ!』という音と振動と共に止まった。
「まずい…」
 次の瞬間、凄まじい轟音と共に落下を始めるエレベーター。
「うおおおっ!?」
 身体が持ち上がる。
 ヴァンはブレードを抜き、天井を切り抜く。
「全員脱出!」
 MAPSの背面に装着されたスラスターを噴射。
 天井から脱出。
 スラスターを全開で噴射し、エレベーターが最下層に落下する衝撃から急いで逃げる。
「E・J!ゲートは!?」
「この状態じゃ無理~!」
「ちっ!」
 ヴァンはライフルの下部に装備されたロケットランチャーを発射。
 発射されたロケット弾がエレベーターゲートを吹き飛ばす。
「破片いくぞ!」
 爆発の衝撃と共に破片が降り注ぎ、その一つがE・Jに掠った。
「うあ!」
 姿勢を崩すE・J。
「E・J!」
 それを見たリックは咄嗟にE・Jの腕を掴んだ。
 重量バランスが狂い、姿勢を崩すリック。
 咄嗟にスラスターの噴射バランスを調整。
 駒運動をしながら上昇していくリックとE・J。
 次の瞬間、エレベーターシャフトの最下層部から凄まじい轟音と衝撃が到達。
 部隊全員は寸でのところで通路に避難した。
「はぁ…はぁ…全員居るか…?」
「ミン、無事です」
「ダン、生きてます」
「タゴール、無事です」
「E・J、居るよ」
「ダニー、無事です」
「エミ、居ます」
「リックは…?」
 後ろの方でふらふらと手を振るリック。
「大丈夫か!?」
「うぅ…」
「おい!」
「吐きそう…」
「大丈夫みたいだな…」
 ヴァンは全員の無事を確認。
「E・J、爆発まであと何分だ?」
「あと、15分…!」
「よし!急ぐぞ! エミ、ドロップシップに通信。脱出の準備!」
「了解」
 エミが、無線装置でドロップシップに通信。
「こちら08、シップ、聞こえるか?」
 雑音ばかりの返信。何も聞こえない。
「…? こちら08、聞こえるか?」
 やはり応答は無い。
「隊長…シップからの応答がありません…」
「通信状況は?」
「ジャミングも通信障害もありません…」
「…とにかく急ごう…!」
 隊は急いでドロップシップの待つ発着ポートに急行した。
 爆発のタイムリミットが迫っている。
 そして、何よりここのコンピューターはナノマシンに侵蝕されている。
 何が起こるか分からない。
 一秒でも早く『ここ』を脱出した方が懸命だ。
 あと、2ブロックで発着ポートだ。
「…ん?なんだ? 前方の左右通路から動体反応あり!」
 全速力で走る隊員達は皆脚を止めた。
「数は?」
「右から3、左から2…いや…増えました!右から5!左から4!まだ増える!」
「くそ!何なんだ!E・J!爆発までは!?」
「あと9分!」
「全員戦闘準備だ…!」