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流星群の叫ぶ夜

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 きっと今いやな顔をしてるに違いなくて、あったら八つ当たりをしてしまいそうで、まっすぐに行けなくなり、途中コンビニに寄って夜食代わりの菓子パンとスナック菓子を買う。太ると文句を言いながらあのこは食べてくれるだろうか。
 飲み物は重たいから向こうで用意してもらうか、目的地に近い自販機で済まそうと思い、ふと、目線を向けた先には三個パックのプリン。なんの変哲もないプラスチックカップに入ったそれ。じわりと思い出した『好き』という発言は何時の記憶かもわからないのに、それをカゴに放り込んでしまった。きっと今じゃ好きじゃないかもしれないのに受け取ってくれるだろうか。

 外へ出ると空は真っ黒に塗り潰されていた。
 携帯のディスプレイに表示された時計を見ると、予定よりも15分も遅刻している事に気付く。
 怒られはしないがけれど心中できっとあの子は怒っているだろうし悲しいだろうし、色々と複雑な感情を溜め込むんだろうなと思うと少し気が重くなって、そのためのプリンか、なんて都合よく解釈。
 遅れていたから足早に向かっていたのに、目的地が近くなるにつれて歩調は遅くなる。ガサガサと耳障りな音を立てるビニル袋を片手になんとなく空を見上げると、チカリと星が光った気がした。

(前みたいに話せる、かな……)

 ほぅと白い息を吐き出して。
 春を思い出す。

 まだまだ余裕を感じていた春。
 あの頃、もう少し努力していたら、知佳の隣に立つ事に引け目なんて感じる事が無かっただろうか。
 もっと素直に一緒に過せただろうか。
 同じ大学とまでは言わないから、せめて、彼女が頑張り続けるまで一緒に頑張れただろうか。


 煌々と月明かりの中、30分遅れた私を迎え入れた知佳は案の定、少し眉を顰めたきり、寒かったね、と言って私を受け入れた。
 そういえば、小学校時代からニコニコと笑っていた知佳と私は喧嘩なんかする事なんてなかった。
 それは全て、彼女が受け入れてしまうから。
 どんなに遅れたって私が八つ当たりしたって彼女は受け入れるばかりだった。
 彼女は一度も私に怒った事が無くて、それが私には凄くやりきれなくって、もっと気に食わなければ怒ればいいのに、と。
 一度だけ大喧嘩をした事がある。
作品名:流星群の叫ぶ夜 作家名:藍澤燈夜