流星群の叫ぶ夜
もっとも長い休み時間である昼休みは元々別にお昼を食べていたので接触する事も無く、そうやって秋口から過していたと言うのに、今になって。
「ダメ?」
「ダメ、じゃなくって。塾とか、いいの?」
「うん。今日、親いないからサボってみる」
「はぁ?!」
「一度、やってみたかったの」
さっきまでの楽しさとは違った、悪い事をする事への高揚感がつまった声に笑顔に私はただただ開いた口が塞がらなかった。
あの何処までも自分に厳しかった人の言葉でしょうか、これが。
「…………休んで怒られないの?」
「多分」
「……じゃあ、見ると仮定して何処で見るの?」
「ウチかな。親いないし、どう?」
選択肢を与えられたようで、これは与えられていないのだと幼い頃の経験から頭の中に光るレッドシグナル。
こちらを伺い見る視線の中に強い光が見え隠れしていてる。
「……ダメって言っても引きずり出す気でしょ?」
「さすが!!」
「はいはい……。色々用意して行きますよ」
呆れたような、疲れたような、何となく自分が上のようなポーズを取って相手を見つめればキラキラとした笑顔を向けられてなんだか恥ずかしくなる。
さっさと鞄を引っ掴んで足早に扉に向かう。
後ろからパタパタと後ろから追いかけてくる足音にじんわりと懐かしさが浮かんできてくすりと笑ってしまった。
ニュースキャスターか、新聞で書いてあったであろう流星群の説明を自慢げに話す知佳と途中まで一緒に帰る。
別れ際、知佳は約束忘れちゃだめよ、なんて可愛らしく残して自転車でゆっくりと家へ帰って行った。
私はというと、あのこ星なんか興味あったっけなんて事を考えながら暖かい自宅へと自転車を漕いだ。
間に合うであろう時間になったので家を出る。母親に知佳の家へ行くと言えば酷く驚かれた事を思い出す。
あんたがムリに誘ったの?知佳ちゃんの都合も考えた?なんて言葉、全部私が悪いみたいな言い方、言葉の裏の私とは違うんだからという文字が見え隠れしていて、幾ら受験が終わったからといってナイーブな高校三年生には棘があると思わないのだろうか。
今に始まった事じゃないけれど、小さな針が刺さったような微かに痛む心臓。
そればかりに気を取られて自転車の鍵を忘れた。
昼間よりも一段と寒い気温にマフラーに顔を埋め出来る限り寒さを凌ぐ。