流星群の叫ぶ夜
態々冬の寒い朝に早起きをして、寒空の下スカート姿で三十分も自転車を漕いだ所で、来て見れば授業も無くただただやる事と言えば読書ぐらいで、尚且つ同じ空間には自分とは対極の人間が何人も居る訳で、頑張っている人間と、頑張ったような頑張らなかったような曖昧なそれでいて進路が約束された人間が同じ空間にいるなんて、私からしたら耐えられない。すぐに切れそうな弱々しい糸がピンと張り詰めたとき空間なんて居た堪れなさしかないんだ。
そんな空間に好き好んでいく人間は余程のマゾヒストに違いない。
グダグダと屁理屈を考えながら帰り支度をしていたら、小学校時代からの付き合いである澤田知佳がニコニコと子どもみたいに楽しそうな笑顔を向けて、知ってた、と私に尋ねた。
私のクラスでは先生の意向かなんなのかわからないが、教室掃除と言うのが週一しかないので、さっさと帰ろうと教室から出て行く中、私と彼女と、数名の教室で勉強をしようとする子だけが残っていた。そして冒頭のやり取りに戻る。
「流星群見れるんだって!知ってた?」
「あー…何かニュースで言ってた気がする」
「暇だったら、一緒に見ない?」
「……私は暇だけどそっちは違うでしょうよ」
楽しそうな笑顔を向ける相手に少し溜息をつく。
早々と進路が決定した私と違い、この目の前で笑う女の子はまだ受験生だ。
パッチリとした目に白い肌とそこだけ赤い唇、こげ茶色の髪は綺麗なストレートでとても女の子といった外見でいつも笑顔を浮かべ可愛らしいのだがこの目の前で幼く笑う彼女は小学校の頃から最後までやると決めたら成し遂げる女の子だった。
内面はとてもストイックで通いたい大学へ行くために努力を惜しまなくて。
間近でそれを見ていた私にはその頑張りだとか努力だとかストイックさとかが眩しくて羨ましくて、苦しくて、惨めで、終いには傷つけてしまいそうな程心が尖って、これじゃあいけないと思い、小学校時代から付き合っていた幼馴染の様な腐れ縁の様な関係を秋口から少しずつ意図的に避けていた。
登下校で鉢合わせしないよう時間をずらしてみたり、わざわざ電車を使ってみたりしていたが、もともと彼女は最後まで受験しようと思っていた人間だ。自然と遅くまで残って勉強するし、話しかけられていた授業の合間も単語帳を捲っていて、私が話しかけられないためにしていた作業もいらなくなった。