七変化遁走曲
テスト初日はこれといったトラブルもなく、不得意な英語も付け焼いた割には良い線行った気がしている。
二日目も同様だ。あとはまた週明けに二日テストがあって、それが終わって7月が来れば夏休みに入ったも同然というところまで来ている。
そういったわけで、金曜日の午後にもなれば少し解放された気分。今日くらいゆっくりしようかなー、なんて考えていると、無言の圧力を感じるので帰宅早々潔く部屋に戻った。
それでも思考回路が勉強から自由になれば、陽花さんの依頼のほうに考えが行く。常葉はああいう風に言っていたけれど、やっぱりまだ納得は出来ていない。
例えば、間違ったものを持っていったらどうなるんだろう?そんな風になんとなく考えて、もやもやする。
「何が、足りないのかしら」
いや、別に必ず一度で正解を当てないといけないって約束ではないんだけれど。
それでも、こうして不確定的なものを明日まで持て余しているのは、時間が勿体ない気がしている。
「とにかく、国語の勉強しよう……」
ごろごろとベッドの上で転がってから、思い切って身体を起こす。夕飯まではまだ時間も充分だった。
試験対策用のプリントを解いて、教科書や便覧を見ながら答え合わせをしていく。平安時代の風俗や風習。内裏の位置付けや、建物の名称。紫宸殿の宸の字が紛らわしくて覚えにくい。
その中に、橘の文字を見てまた集中力が曖昧になっていく。
左近の桜、右近の橘。
多千花。
……駄目だわ。少し休憩。