彼と私の宇宙旅行
宇宙船高度技術者訓練校は、そのあまりの知名度の高さのために単に「訓練校」と呼ばれる。入学するには国籍を一切問わない試験を突破する必要があり、宇宙開拓時代における将来性と支援金などが手厚いことから、倍率は数十万倍と言われている超難関だ。
私は国内成績一番で特待生入学した。
両親は喜んだし、私は自分の輝かしい未来に有頂天になっていた。自分が宇宙を飛び回り、未だ問題が山積みの惑星間(プラネット)航路(ライン)などを駆け巡る様を思い浮かべた。宇宙の開拓時代はいよいよ最盛期を迎えようとしていた。
たった一夜の天下だった。
〝彼女〟は試験の日に熱を出した為に、予備試験を受けて入学した。得点は史上初の満点。予備試験だったために公式の成績としては残っていないが、私は本人から聞いた。
その後、私と〝彼女〟は事あるごとに(実際のところは私が一方的に)張り合うのだが、筆記・実地・技能・体力・武術・etc.……、全てにおいて〝彼女〟には敵わなかった。各分野においては〝彼女〟を凌ぐスペシャリストもいたのだが、私のような全てを満遍なくこなそうとする人では誰も〝彼女〟には敵わなかった。
〝彼女〟は天才だ。それも、努力を決して怠らないタイプの。
だから、才能で劣る私では敵わなかった。そして、敵わないままに届かない所へ去ってしまった。
卒業試験では私は総合で五位。名前も知らない男が総合首位を獲得して宇宙機構への推薦を受けた。私は中小の宇宙航空会社に入社した。
そして、卒業から三年目のある日、初の宇宙航行を前にして事故で右腕を失った。