男女平等地獄絵図
閻魔のルール
「なっちょっ…頭あげろよっどうしちゃったんだ?!」
焦りまくる私。
だってついさっきまであんな上から目線だったのに急に…。
ドッキリか?!
「…申し訳ございません。そうとも知らずあの様な失礼な態度をとってしまい…。しかし言い訳を言わせて下さるなら、どうしてもう少しお早く教えて下さらなかったのですか?」
(…!!)
何が?!
…己の立ち直りの早さに若干驚愕しつつもわたわたと慌てる。
一体この場をどうすれば…!!
マコは上目使いで私を見上げる。同性ながら思わずときめく。
「えーとあのうそのう…つまり私はなんなんですか?」
きまりが悪くなりつつ尋ねてみた。
マコはまさか!という顔をする。
「その額の印…閻魔様以外にいらっしゃいません!!」
…あ…
そういやあいつキスしてでこさわって…
「…」
…!!
(「お、でてきた…」)
…騙されたぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!
悔し涙をふりとばし私はかぶりをふった。
「なんなんだもう…」
大体あんなビューティフルな人の後釜なんてもう最悪だ。あぁ皆のがっかりする顔が目に浮かぶ。
頭をふりつづける私にマコは優しく声をかける。
「大丈夫ですよー、私たちが補佐しますから。」
ちょっと馴れ馴れしい口調に戻っている。
ていうかそっちの心配してなかったや。
まずは顔だろ。地獄のさたも顔次第…あれ?金か。
(なかなかどの世界もえげつないよなぁ。)
私は脳内で話を跳ばす天才なので、途中で自分の考えていたことがそもそもなんだったのかよく分からなくなった。
そのせいでさらに考えごとが長くなりチクタクと時間が過ぎていく。
マコは一見何かしら思案している様にも見える私を生真面目に見上げていた。
でもいい加減しびれを切らしたらしい。
きりりとさらに表情をかたくして、急に指をつきつけてきた。
「…早速ですが閻魔様、我々は出来るだけ早く代替わりの儀を開き極楽・地獄双方に新閻魔大王の誕生を伝えねばなりません。…そのためにはお早く神使をおきめ願いたいのです。」
紳士…?
「地獄って男いないんじゃなかったのか?」
マコはまだ指をさし続ける。ちょっと失礼なような…。
指輪が金色に反射する。
「失礼致しますが『神使』、…それとはつまりは神の使いのことでございます。神使の主な仕事は神や大王様の身の回りを整えさしあげたり、常に仕事の右腕としてお側におつかえすることでございます。…時に」
(…なるほどなぁ、それにしてもなんだか頭がぼうっとしてきたな…。まだ頭ぶつけた影響が…?)
指輪は光続ける。
「私めなどいかがですか?…」
(ゆび…わ)
「…神使として。」
…?
「なんだか変だぞその指輪。」
…途端にマコはしたうちをした。
でも顔は笑っている。
「…さすが馬鹿でもヤマ様に選ばれただけあるぅー。野生の勘だけは合格か。でももう手遅れよー。マコサマの催眠からは逃れられないの。」
「なっ…」
指輪が…
指輪が迫ってくる。
その時だった。
ひゅるんっと一陣の風が吹き、元閻魔大王が落ちてきたのは。
「はっ…?!」
元閻魔大王はくるくると空中で数回器用に回転し、綺麗にすとんと地面についた。
一体どこから…。
「…失礼。椿、いい忘れてたが神使は不要だ。安心しろ。悪いなマコ」
「ん?」
あ、ヤマってもしかしてこいつの本名なのかな?
閻魔大王にも本名あるんだな。
(多分)ヤマはにやにやと笑っている。
マコはぎろりとヤマをにらんでいた。
「何でですかぁ。こんなど素人神使なしでどうやってやってくわけぇ?ヤマサマだってさぼりまくってたくせにぃ」
ヤマは表情を変えない。
こうやって見るとやっぱりすんごい美人だ。
マコもかなりのだけどヤマは次元を超えている。
ヤマは笑ったまま続ける。
「よく聞けマコ、椿。というか主に椿。地獄にはなぁもんのすごい種類があるのだ。八寒地獄だとか八大地獄だとか十六小地獄だとかな。…しかもその一人あたりの刑罰期間がまたもんのすごく長い。何千何億何兆もの年月がかかる。…って、いうのはマコは知ってるよな?」
へっへぇ?。
しらなんだ
隣を見るとマコは当たり前ですとふてぶてしい顔をしていた。
ヤマは満足げにうなずく 。
「よってそれだけそこの統括も大変ってわけだ。まぁそれぞれの地獄にも頭はいるわけだが結局は閻魔がトップだからな。…椿、そこまでわかったか?」
「…わかった…」
もんのすごい厄介だということが…
「…だからまぁ、な。私がつけばよいわけだ。補佐に。」