男女平等地獄絵図
「…で、死因はなんなのか理解してる?」
唐突に美人ジャージ鬼が私に尋ねてきた。
風はますます強くなり、雲はますます厚くなる。
冷えた空気が私を取り囲んだ。
「…死因?」
(なにいってんだこいつ)
鬼は覚めた目付きで私を見る。…そしてあぁ、と小さく頷いた。
「ちょっと失礼するよー」
私の頬に右手をあてる。
「…?…っわっ」
風がさらに強くなってきた。
…いや、これはもはや風なんてレベルじゃなかった。
…竜巻だ。
「っ…」
声が出ない。
いつのまにか私達は竜巻の中心部に立っているのだった。
鬼は急に手を離した。
瞬間に、ひゅうっと音をたてて彼女の掌に竜巻は吸い込まれていった。
「っ…っなんなんなに今のっ…」
鬼は平然と答える。
もう空は先程と同じ曇り空だ。
「なるほど…フラれたショックで滑って転んで頭をごちん…うちどころ悪かったんだー。つうか相手も気の毒だねー、そーゆーわけであんた死んでるから。」
は?
なんだ…
夢にしてはひどい話
「夢じゃないよ」
鬼は心をみすかすかのようにばっさりといい放った。
意味わかんねぇ。
鬼は私の顎を人指し指で指す。
嫌がおうでも指輪が目に入る。
「…だから、あんたは、死んだの。思いだしな、いい加減。」
(…いや…)
そんなのおかしいそんなことって絶対ないそんなことあっちゃいけないだってそんなくだらないことでそんな…
死んだの?
夢をみる前の最後の記憶、倒れた私の上で叫ぶ沢谷の必死な表情。
「…いっいやああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁーッッ!!!!!!」
有り得ないだろ…有り得ないだろだってそんなのっ…
鬼は微笑む、泣きわめく私を見ながら。
そしてふと気付く。
(「地獄についたらマコっていう鬼がいるからなにか言われたらおでこ見せな」)
あぁ、こいつが…
「つぅわけで、裁判する?」
地獄の門番、マコか。
…私は泣きながら髪をかきあげた。
どうなるのかも知らずに。
まさかマコが…
「っ…閻魔大王様!!」
ひれ伏すなんて夢にも思わず。