小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

男女平等地獄絵図

INDEX|5ページ/45ページ|

次のページ前のページ
 




ヤマはにやにやとしていた。
その姿さえはたから見れば美しい。


…彼女は予定外の好展開に喜んでいたのだ。

まだ誰も知らない!…そう誰も。

しかしその幸せ気分も目の前の空席を見ると萎えてしまう。
今日はあのイケスカナイやつとの食事会なのだ。


ヤマはやつが大の苦手だった。
…どうにも面倒くさいタイプなのだ。特にヤマのようなタイプにとってはなおさら。

(できるならば…逃げ出したいな。)


ヤマは凝った細工の窓を眺めた。外は曇っている。



…しかしそれは不可能だ。

なぜなら相手は極楽の元締め(?)なのだから。
それに極めて業務的な話だとか、秘密がきちんと継続して守られているかだとか、こちらがわからしても色々と定期的に話さざるをえないのだ。

(…だがそれも今日で最後。)


ヤマは紅い竹の扇で軽く自分を扇ぎ、またにやりとした。



コンコン



(おっと…)




阿弥陀様の到着だ。




「失礼、遅れた。」


阿弥陀はしゃなりと席につく。

淡い茶色の柔らかい髪。少し焼けたなめらかな肌。
大きな瞳が一際際立つ恐ろしく整った顔立ちの好青年だ。


ヤマはふんと鼻をならし前をみた。


…阿弥陀はいつも通り平然とし、一瞬停止した。

しかし、また冷静な表情に戻る。


ヤマはその表情の変化を逃さなかった。


「もう気付いた?さすがだね。」


まるで悪戯が成功した子供のような態度だ。


対する阿弥陀はすぅっとよく磨いだナイフのようにヤマを睨んだ。


「いつのまに引退したんだ?元閻魔大王殿は。…そもそもの取り決めは忘れたと言うのか。本末転倒も甚だしい。」

ヤマは笑顔を崩さない。

そして扇でぴしりと相手を指した。

「知ってるか?まぁ知っているだろうな!昔の日本国にはな、院政というものがあったんだ。…それで言うならばいわゆる私は上皇だよ。実質的な権威は私にある。これで異存はなかろう?」

ヤマは少年のようにもう一度微笑む。




「…阿呆だな。」


阿弥陀は声もなく、大人びた少女のように苦笑いした。


作品名:男女平等地獄絵図 作家名:川口暁